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    <title>曖毎妄想</title>
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    <updated>2010-05-17T15:15:40Z</updated>
    <subtitle>日々繰り返される曖昧な妄想と文章の集まり</subtitle>
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    <title>最後の妄想</title>
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    <published>2010-05-18T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-05-17T15:15:40Z</updated>

    <summary>皆々様方、こんにつわ。山田で御座いマッスル。ワタクシこと山田は、武蔵野Rのライタ...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[皆々様方、こんにつわ。<br />山田で御座いマッスル。<br /><br />ワタクシこと山田は、武蔵野Rのライターとして、約３ヶ月間、仲間と一緒に曖毎妄想として、ショートショート小説を書かせていただいておりました。<br /><br />
そんなワタクシコンテンツ、曖毎妄想の妄想文章達を、この度、紙媒体として発行する運びとなりましたこと、こちらでご報告させていただきます。<br /><div id=":3e7" class="ii gt">
<br />
曖毎妄想ですが、別サイトにてブログがなかった時代から、<wbr>こつこつと更新してきたコンテンツで御座いマッスル。<br />
ワタクシのコンテンツは小説の部類なので、<wbr>できれば紙にしてやりたいと、時折、思っておりました。<br />
<br />
とはいっても、自主出版（ともいえないコピー配布）<wbr>のレベルです。<br />今後も妄想文章を綴っていく予定ですが、それらは紙にてお披露目するかたちとなります。<br /><br />現在用意している、<a href="http://81key.com/">ウェブショップ</a>や、<wbr>地元主催のクリエイターマーケットなどで、<wbr>コンテンツとして扱っていく予定です。<br />
<br />
妄想を好いてくださっていた読者の方々、今までありがとうございました。<br /><br />
<br />
アタクシは違ったわたしとなって、<wbr>まだまだRの仲間と一緒に、活動を続けていきます。<br />
<br />
さようなら、そして、こんにちは！<br />
そんなヤマダをどうぞ宜しくお願い致しマッスル。<br />
<br />
それではかしこ。</div><br /><br /><br /><div align="right">2010年５月吉日<br /></div><div align="right">山田ゆか子<br /> </div>]]>
        
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    <title>救世主</title>
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    <published>2010-05-11T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-05-11T07:43:28Z</updated>

    <summary>その男がどこから来たのか、誰も知らなかった。 いつのまにか誰もが知っていて、どこ...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[その男がどこから来たのか、誰も知らなかった。<br />
いつのまにか誰もが知っていて、どこにでもふと現れるような存在のその男に、誰もが注目するようになっていた。 <br />
<br />
男はまだ若く、黒く長い髪を後ろに束ねていた。服装は現代のものとはほど遠く、一枚の布をうまく巻いてまとっているだけで常に裸足だった。まるでギリシャ神話にでてくる神のような格好をしていた。<br />
<br />
その男は次第に皆から「救世主」と呼ばれるようになった。<br />
なぜならその男は、通常の人間では考えられない力を備えていたからだ。<br />
<br />
男が思ったことを言うと、大小問わず、男が「悪」と判断したものに対して処罰を与えることができたからだ。<br />
<br />
その男は「思うものを消し去ること」ができた。<br />
恐ろしいほど何でも一瞬にしてその場から消し去ることができた。<br />
<br />
その力の前では、今日の軍事力も科学も、呪いすら、何もかもが無力だった。<br />
簡単に言えば、古代伝承の中に現れる神のようだった。
何故かというと、男のまわりには何か薄いヴェールのようなバリアーのようなものがあって、ボーっと鈍く光っており、直接触れることができないからだった。
それは人の手であったり、弾丸だったり、太陽の日差しだったり、重力であったりするのだった。<br />
<br />
もしかしたら、空気も水も男に触れられないのかもしれないと思うほど、男は何も口にしないし、何も言ったりしなかった。ボーっと鈍く光りながら、フワァリと地面から浮いた状態で歩いているのだ。<br />
ただ、何かを消し去ってしまうとき、口元がほんの少し動くので、何かをしゃべっているのだろうが、その声を聞いたものはひとりとしていなかったのだ。<br />
<br />
救世主は、ありとあらゆるものを消し去った。<br />
あるときは、漁師の船に覆い被さろうとしている大津波。<br />
あるときは、異常気象からくる寒波による低気圧。<br />
あるときは、大量のスギ花粉や中国からの黄砂。<br />
あるときは、雨上がりの崖崩れで落ちてきた大岩。<br />
あるときは、飲酒運転して暴走し、子供と老人を跳ねそうになった車。<br />
あるときは、献金が発覚し、隠蔽しようとした大物政治家とその秘書。<br />
あるときは、麻薬取締法違反の薬物中毒な若者グループ。<br />
あるときは、地球に接触するといわれていた隕石。<br />
あるときは、某アジア国が保持している核爆弾とその施設。<br />
<br />
などなど、大きなものから小さなものまで、人だったり自然だったり有機物だったり無機物だったり、何もかもが思うがままに、という感じだった。<br />
<br />
そんな救世主だからこそ、各方面から狙われた。<br />
ありとあらゆる場所から、スナイパーやら殺し屋やら、しまいには軍まで動いたこともあった。 背後に立つと撃たれてしまう、というかの有名な殺し屋でさえ、救世主を殺すことはできなかった。 <br />
そして近年になってようやく救世主を狙うものなどいなくなった。無駄な行為だというのが身にしみたからだ。なぜなら核爆弾に直接当たっても死なないのだから。<br />
<br />
救世主がいないところでは相変わらずだったが、それでも毎日いたるところで確実に何かが消えていった。救世主は恐れられたり、崇められたりと、そんなふうに月日が流れた。<br />
<br />
長い長い年月のなかで、いつしか救世主は恐れられ崇められることが定着し、人々の中で、崇めるということは神に手を合わせる毎日の習慣であり、消される行為は天罰、のような認識に変わってしまった。<br />
つまり、本当の神のような存在になってしまい、誰もが意識することなく過ごすようになってしまった。そうして人間は更なる進化を遂げることとなった。<br />
<br />
あるとき、どこかの国の道ばたで、救世主が立ち止まった。<br />
だれもそれを意識することはなかった。すでに歩いているのは救世主くらいで、皆はテレパシーで話をしながらシャトルに乗って移動していた。<br />
地球上からは緑と水が消えかけていた。<br />
<br />
急に皆の頭に声が響いてきた。<br />
<br />
...<br />
最悪だ。なんだこのざまは。<br />
<br />
私が悪意を消し去っている間に、人間はここまで進化したというのか。しかも身勝手に。<br />
私にうまく押し付けて、勝手に進化しおって！<br />
<br />
そもそも私は救世主ではない。<br />
遥か昔に神に背き、戦いを挑み、死ぬことを認められないという罰を与えられてしまった、ただのまぬけな罪人のうちのひとりだ。<br />
死ぬことを認められていない、というと聞こえがいいが、何をしても死ぬことができないだけなのだ。本当ならば、しばらくして神より死を与えられるはずだったが、運悪く私だけ忘れられてしまったのだ...。<br />
<br />
今までの善意？とんでもない。<br />
私がこれからも死なないであろう世界を、おまえたちの勝手で汚されたくなかっただけだ。<br />
私が目を離したすきに、やれ科学だの文明開化だの、核だの汚染だの温暖化だの人口肥大だの、どう考えても悪い方向にしか未来が進んでいないではないか。<br />
これでは今後、また数千年、いや数億年という月日を、山の中で静かにゆっくりと進化を続ける生物とともに生きていくことができないではないか！<br />
<br />
最後に救世主は、静かに目を閉じてこうつぶやいた。 <br />
「人間よ、みんな消えてしまえ」<br /><br /><br /> ]]>
        
    </content>
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    <title>わたし</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/05/post-10.html" />
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    <published>2010-05-04T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-04-30T15:35:32Z</updated>

    <summary>インターネットが普及して、便利な世の中になりました。  そういった中で、私がこん...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[インターネットが普及して、便利な世の中になりました。<br />
<div class="jgm_entry_desc_mark"> そういった中で、私がこんなに大胆な人間だったということも、インターネットが普及しなければ、気付かなかったことかもしれません。<br /><br /><a href="http://moso24.blogspot.com/2004/05/blog-post_26.html" name="sequel"></a></div><a href="http://moso24.blogspot.com/2004/05/blog-post_26.html" name="sequel"></a> インターネットの中では、私は本来の自分ではなく、憧れていた理想像の他の人格を作り出し、楽しむことができるのです。<br /><br />
私がインターネットの世界で、どんな人格を作り出し、堪能しているかというと、本来の自分は引っ込み思案で、思ったことも言えないような性格なだけに、ネットの中の私は、活発で明るく、竹を割ったような正確の持ち主の女性像なのでした。<br /><br />
私こと「山田」は、誰からも愛され、時にはネットの中で笑ったり、泣いたりする、表現力の豊かな部分も見え隠れする、素直な女性です。<br />
自分で作ったHPでは、いつもの物静かな外観とは裏腹に、ありもしないことを「想像」に任せ、あたかも存在する事実のように、書き綴っていたのです。<br /><br />
しかし、そんな楽しい毎日に、水を差すような出来事が起こりました。<br />
私は私を偽り、そしてネットの中でヴァーチャルな毎日を過ごしていたわけですが、その私は実際に存在せず、本物の私を知るものもいないはずでした。<br /><br />
その始まりは、私のHPの掲示板に書かれた一言から幕を開けました。<br /><br />
『本当のお前を知ってるぞ。』<br /><br />
書かれたその文字では、誰なのか？というのは想像することはできませんでした。ほんの数文字の中に、殺意を感じました。<br />背筋が寒くなって、変な汗が全身の毛穴から出てくるのを感じました。<br />
〜誰だろう？〜　<br />私の思考は、過去の記憶を駆け抜け、何かを見つけ出そうと必死になっていました。<br />しかし、私がヴァーチャルな世界を楽しもう、と決めた時に、そのような落ち度がないように、取り計らっていた為、思い当たる節は、全然ないのです。<br /><br />
私は暫く、HPを放置することにしました。<br />いつもは毎日更新していたのですが、この時ばかりは、掲示板の書き込みを消去するのが精一杯で、その先に進むことができなかったのです。<br /><br />
最初の書き込みから2･3日が過ぎ、何事もなかったのですが、4日目にまた、例の誰かからの書き込みを掲示板で見ることになりました。<br /><br />
『消したって何度でも書き込んでやる。』<br /><br />
書き込みを見つけた時、暫く体が固まってしまい、動くことができませんでした。書き込まれた数文字に、瞳が釘付けになってしまい、頭の中が白くなっていきました。<br /><br />
ふと我に返り、少し冷静になった後、掲示板に管理画面でIP表示ができる機能があることを思い出しました。<br />
震える手で、マウスを動かし、書き込みの時間より、IPアドレスを確かめ、書き込み不可能にしてしまおう、と思った矢先に見つけたIPは、見覚えのあるものでした。<br /><br />
そうです。それは、私のパソコンからのIPでした。<br /><br />
バクバクする心臓を抑えながら、瞳を閉じて、この事態を把握しようと必死に考えました。すると、脳裏を何かが霞めていきました。<br /><br />
普段は到底見せることのない、私の笑顔。<br /><br />
どうやら私は、ヴァーチャルな世界で、二重人格を装っていたはずが、多重人格になっていたのです。<br />
何人いるかわからない私たちが、これから、日々交代にパソコンの前に座るようになるまでには、そう時間がかからないでしょう。<br /><br />
この書き込みをしている今も。<br /><br /><br /> ]]>
        
    </content>
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    <title>時を越えて</title>
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    <published>2010-04-27T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-04-27T12:50:54Z</updated>

    <summary> 目覚ましの音で異変に気がついた。 これは、私の目覚ましの音じゃない、そう思って...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[<span class="widget-item-control"><span class="item-control blog-admin"></span></span>

目覚ましの音で異変に気がついた。<br />
<br />
これは、私の目覚ましの音じゃない、そう思ってまだ起きていない頭を持ち上げて時計を手に取る。まだ6時、外はほんのりと明るくなっていた。<br />
ゴソゴソッ、と横で何かが動く気配を感じる。振り向くと父が寝ていた。<br />
「ちょっと！何でこんな所で寝てるのよ！」<br />
「･･･おい、何言ってんだよ･･･。早く朝飯の支度しろよ･･･。」<br />
<br />
何が何だかわからず、起き上がってみると、そこは両親の寝室だった。クローゼットの側面の鏡に薄暗く映ったのは、紛れもない、母の姿だった。混乱する意識の中、そのまま部屋を出て、私の部屋に向かった。<br />
<br />
人の気配はなかった。きちんと片付けられている部屋。暫くの間、誰もここで生活していないことを語っている。それでも私の部屋。<br />
<br />
『一体、どういうことなんだろう･･･。私は･･･そうだ、私は今月の頭からアメリカに留学したんだった･･･。』<br />
<br />
記憶がじんわりと蘇ってくる。デザインの勉強をしたくて、大学を休学し、無理を言って留学してしまったのだ。父はとても反対した。そんな父を母が説得してくれた。母はとても嬉しそうにこう言ってくれた。<br />
<br />
『あなたの人生なんだから、あなたのやりたいようにやってみなさい。後悔しないようにね。』<br />
<br />
そういって母が笑ったのを覚えている。その母が今、目の前にいる。私が母そのものになっている。部屋のドレッサーの鏡に座ってみる。鏡が映し出しているのは、やはり母の顔だった。<br />
<br />
じっと見つめる。化粧っ気のないその顔は、どこかやつれていた。<br />
いつも明るい母の、こんなにまじめな顔を見るのは、初めてな気がする。目じりと口元には深い皺。笑い皺。目の下にはクマができている。触れた唇は、少しカサカサしている。<br />
<br />
夢じゃなかった。私の体は、母そのものになってしまっていた。<br />
<br />
どうしていいかわからず、その場でじっと鏡を見つめていると、背後から声がした。<br />
<br />
「おい、どうしたんだよ。ミクなら留学しただろう。早く支度をしてくれ。」<br />
<br />
そいうって立ち去る父を呼び止めようとしたが、言葉が出なかった。仕方なくそのまま母のクローゼットから服を取り出し、着替えてキッチンに向かった。<br />
<br />
父は着替え終わって、新聞を片手にいつもの席に座っていた。不思議な光景。私は私の席に座ることもなく、そのまま朝食の準備をするなんて。そんなことしたこともなかった。何度か父に話しかけようとしたが、何を話していいか、何から話していいかわからず、やめてしまった。<br />
<br />
簡単な朝食を作り、父と二人で食べる。そして思わず父の顔を覗き込む。それに父が気づいた。<br />
<br />
「何だよ、今日は朝から何だかおかしいぞ？調子でも悪いのか？」<br />
『ううん。何でもない･･･。』<br />
そう言うとちょっと心配そうな顔をして、今日は付き合いがあるから遅くなる、と言って出かけてしまった。<br />
<br />
父が出かけた後、リビングのソファに、腰をかける。深いため息が洩れる。これからどうしよう。漠然と思った。そうだ、アメリカに電話してみよう。そして受話器を手に取る。<br />
<br />
何回かのコールの後に、受話器を置いた。もう『私』は学校に出かけたのかもしれない。そもそも『私』はどうなっているんだろう。私が二人いるのだろうか。私は誰？そうしているうちに、強い眠気に誘われ、そのまま横になった。<br />
<br />
意識がやんわりと蘇る。外はもう暗くなっている。いけない、どれくらい眠ってしまったんだろう。体が異常に重く、首に手をやると、とても熱い。<br />
<br />
玄関先で物音がする。父が帰って来た。ソファに腰をかけている私を見て、父が心配そうな顔をする。<br />
「大丈夫か？だからいつも言っているだろう。あまり無理するな。」<br />
『･･･ううん、何でもない、大丈夫。』<br />
そう言うと父は、ほっとしたような顔をして、着替えるために部屋へと消える。暫くして戻ってくるなり、冷蔵庫からワインを取り出した。<br />
<br />
「ちょっと、一杯飲もうか？」<br />
<br />
グラスにワインが注がれる。こんなことを父と母はしていたのだろうか。一緒に晩酌をする姿なんて、一度も見たことなかった。<br />
<br />
母に優しい言葉をかけている父も、見たことがなかった。どちらかというと、亭主関白だと思っていた。仏頂面で、言葉も少ない父から、日ごろ、読み取れるものは少なかった。私は読み取る必要もなかった。<br />
<br />
言葉ないまま、用意されたグラスを見つめる。トクトクトク、と静かな音を立ててワインが注がれる。<br />
<br />
ぼそり、と、父が呟いた。<br />
「あいつ、俺から逃げるようにして行ってしまったからな。」<br />
そして小さく笑った。<br />
<br />
『え？』と言って顔を上げると、父が悲しそうな顔をして、背中を丸めていた。<br />
<br />
「留学には頭ごなしに反対してしまった。でも、本当は、ただ、淋しかっただけなんだ。」<br />
父は、私のことを母だと思って語りかけている。そこに、父の本音が漏れる。<br />
<br />
「淋しいというよりは、心配なんだろうな。ただ。何となく、近くにいたものが離れていくというのは、そういう気持ちになるもんだ。」<br />
ハハハッ、と空笑いして、父はワインをグィっと飲み干した。<br />
<br />
「お前も本当は俺のことを恨んでいるんだろうな。」<br />
父はちょっと酔っ払っているみたいだった。泣きそうな顔をしながら、笑っていた。<br />
「何も言わなくても解るさ。あの時と、ミクが留学したい、と言ったときが、重なっただろう？」<br />
<br />
そう言いながら、二杯目のワインをグラスに注ぐ。<br />
「俺はお前の夢を、断ち切った張本人だからな。お前が後悔していることくらいわかるさ。だけどやっぱり親子だな。ミクはお前の血を引いているんだなぁ。」<br />
<br />
何のことだかわからなかった。私がお母さんと同じ？何が？<br />
「今日は疲れたからこのまま寝る。お前も早く寝なさい。」<br />
そう言って父は、二杯目のワインをグイッと飲み干し、キッチンから姿を消した。<br />
<br />
私は驚いていた。そして動揺していた。<br />
なんとも言えない気持ちになっていた。父の愛情、そういうものを感じることは、日ごろ難しい。親子だからこそ、わからない。本当は親子だからこそ、解り合わなくてはならないのに。<br />
<br />
それと父が母に言っていたこと。夢を断ち切った、という話。私が産まれる前の話のようだ。何のことだろう。母には夢があったんだ。母の夢なんて、考えたこともなかった。<br />
<br />
独り残された部屋の静寂を、一本の電話がかき消す。<br />
ピロピロピロ・ピロピロピロ･･･。<br />
ああ、びっくりした、電話か、と、胸の辺りを押さえながら受話器を取る。<br />
<br />
「･･･はい。」<br />
暫しの沈黙。<br />
<br />
「もしもし？」<br />
『寝てた？』<br />
その声は、紛れもなく"私"の声だった。<br />
<br />
「･･･あ。」<br />
『ふふ。ごめんね。驚いたよね。私よ、母さん。』<br />
「どうして･･･。」<br />
『そうよね。私もびっくりしたの。まさかこんなことになるとはね。』<br />
「･･････。」<br />
<br />
『ごめんね。本当は心残りだったの。あの日、夢を諦めてしまったこと。でもね、もう大丈夫。ありがとう。』<br />
「･･･え？どういうこと？」<br />
『もう切るわね。おやすみ。もう少しだけお父さんをよろしくね。』<br />
「･･･！お母さん！ちょっと･･･」<br />
<br />
私の言葉を待たずに、電話は切れた。<br />
どういうことなのだろう。まさかこんなことになるとは？心残りだった？大丈夫？どういうこと？<br />
<br />
軽い眩暈がして、ソファに倒れこんだ。途切れ途切れの意識の中で、思い出す。<br />
<br />
小さい頃、母が私に見せた『デッサン』の数々、学校に行っていた時の作品の数々。私と一緒にお絵かきを楽しそうにしている母。<br />
<br />
物音に気づいたのか、隣の部屋から顔を覗かせた父が、驚きながら私に駆け寄る。何か言っているが、頭に聞こえてこない。<br />
<br />
そうか、そうだったのか。そう思った。そして私は父に告げた。まるで母の代弁をするかのように。<br />
<br />
『お父さん、私は後悔なんかしてないから。これでいいから･･･。いつもちゃんと思ってくれてありがとう･･･。』<br />
<br />
私の名前、未来。母は私に託したものがあった。それは彼女が迎えるはずの未来。<br />
そして母は叶えられなかった夢を、一瞬だけれど叶えた。思いの強さが、時に奇跡を起こすのだろう。<br />
<br />
私は家族の大切さを知った。私は自分ひとりで生きているわけではない。母と父の思いを愛情と共に受け、そして生きている。<br />
<br />
想いが時を越える。<br />
<br />
その事実が、当たり前のことは、当たり前なのではないと、私に思わせてくれたのだった。<br /><br /><br /><br /> ]]>
        
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<entry>
    <title>通常禁止用語条約</title>
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    <published>2010-04-20T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-04-20T12:15:07Z</updated>

    <summary> 朝起きたら、世の中は大変なことになっておりました。 新聞やTVを一切、目にしな...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[<span class="widget-item-control"><span class="item-control blog-admin"><a class="quickedit" href="http://www.blogger.com/rearrange?blogID=276248624267976516&amp;widgetType=Text&amp;widgetId=Text3&amp;action=editWidget" onclick="return _WidgetManager._PopupConfig(document.getElementById("Text3"));" target="configText3" title="編集"></a></span></span><p>
</p>朝起きたら、世の中は大変なことになっておりました。<br />
<br />
新聞やTVを一切、目にしないわたくしがそのことに気付いたのは、近所のコンビニにマンガを立ち読みしに行ったからです。そうでもしなければ、わたくしの身も危ないことになっていたに違いありません。<br />
<br />
それは『通常禁止用語条約』が可決された為です。<br />
巷は朝からその話題で持ちきりだったのですが、世間様に背を向けて生きているわたくしとしましては、知る機会がないばかりか、人に会うことすらまばらな毎日を過ごしておりますので、危険窮まりない状態でした。<br />
<br />
『通常禁止用語条約』とは、一般会話の中で、使用してはいけない言葉、というのが世界125カ国で統一された、ということだそうです。詳しいことは、未だわかっておりません。<br />
<br />
何故危険か？と申しますと、その禁止用語を曲がり間違って口にした場合、そこらじゅうにウジョウジョ徘徊する警察官に、即、連行されてしまうばかりではなく、一般市民に通報されてしまうからです。<br />
一般市民の方々には、『1通報あたり10万円』の懸賞金が用意されているので、皆さん血眼です。このご時世ですもの、仕方ないと言えば仕方ないのでせう。<br />
<br />
『通常禁止用語条約』に指定された言葉は30語ほどですが、それもランクに分けられています。<br />
一般市民の懸賞金は一律ですが、禁止用語刑務所のお勤め期間（懲役期間）は、ランクによって変わります。<br />
レベル５が一番罪が重く、レベル１が軽い、といった状態で、レベル５で連行された場合、お勤め期間は、『無期懲役』です。レベル４から１までは20年ずつ懲役期間が減っていく、という形になっています。<br />
<br />
『無期懲役』から20年間ずつ減っていく、という決まり自体が、かなりアバウトなのですが、何故そうなっているか？というと、殆どの人が『無期懲役』という罪を犯してしまう為、その下の罪はほとんど実行されることがない、という状態だからだです。<br />
<br />
その無期懲役の中のひとつの言葉をご紹介いたします。<br />
『えーっと』です。<br />
<br />
戦後、日本は産業革命により、破滅した国家を飛躍的に建て直し、一般市民の生活レベルまでを上げてまいりましたが、その為に失われたものがあります。それは人間としての決断力や、強い意思などです。<br />
「えーっ
と」という言葉には、迷いが感じられるということで、No！とちゃんと言えない日本人には、この言葉が一番重い罪となってしまったのです。そういえば
「NOと言えない日本人」という本もありました。あれは未来を予測し、現代人に今の条例を警告する意味で出版された本なのかもしれません。今となってはそ
の意味を知る人は、あたくしくらいでしょうけれど。<br />
<br />
そこで、コンビニでそのことを知ったわたくしは、早速マンガではなく新聞を立ち読みしたわけですが、どの新聞も一面はこの話題で持ちきりでした。<br />
真剣に新聞に目を落としていると、「御用！御用！」と言いながら、何人かの警察官がコンビニの中にすごい勢いで入ってきて、レジ前にいるひ弱そうな学生らしき人物を、かついで消えていきました。<br />
ひ弱そうな学生は、青ざめた表情で、口から言葉にならない音を「ヒューヒュー」と発しながら、なされるがままに、かつがれて行ってしまいました。<br />
<br />
その時、コンビニにいた数人の客達の噂によると、ひ弱な学生らしき人物が、レジでおでんの具を選んでいる際に、「えーっと」と口走ってしまったそうです。
それはいけません。レジの前には、この条例を警告するかのように、『商品は確実に選んでからレジにお越しください。』という、昨日はなかった張り紙までも
ご丁寧にしてあります。<br />
<br />
さらに少し時間が経過したかと思いきや、バタバタと数人の警察官がコンビニ内に「御用！御用！」と入ってきて、レジに立っていた中年らしき店員をかついで消えていきました。<br />
噂をコソコソと聞くために、レジ周りになんとなく製品を選ぶふりをして立っていたわたくしは、その一部始終を聞いておりました。<br />
噂をしている人物が、店員に「おでんの具はどれがお勧めなの？」と聞いたところ、店員が「えーっと」と口走ってしまったのです。<br />
<br />
わたくしが『アチャー！』と思うのと同時に警察官が入ってきたのには、かなり驚きました。店内にはきっと、小型盗聴マイクがありとあらゆる場所に仕掛けられているに違いありません。<br />
この様子からして、昨夜一晩で、町中、どこもかしこも、監視カメラやマイクが仕掛けられた様子です。（立ち読み続行）<br />
<br />
わたくしもうかうかしてられません。こうなったら、今日はまれに何の予定もないので、家に帰っておとなしくしているしかありません。レジ近くにあった、液晶TVに映し出されていた映像では、すでに『反通常禁止用語条例』のデモが始まっている様子です。<br />
<br />
こうなったら他人任せです。何故なら、自分ではどうにもできそうにありません。どうやっても口走ってしまいそうだからです。<br />
<br />
コンビニを後にする際、迷わず一つ買った品物が、ガムテープだったことは言うまでもありません。この際、口周りがかぶれるからやだ！とか言ってられません。<br />
<br />
素晴らしいことわざ（謎）を思い出してください。<br />
『明日は我が身』です。いえ、明日どころか、『一瞬先は我が身』なのですから。<br />
<br />
<br />
...ォォ恐。モゴモゴモゴ。<br /><br /><br /> ]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>リセッット</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/04/post-7.html" />
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    <published>2010-04-13T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-04-13T05:17:10Z</updated>

    <summary>人生をリセットできたら、と思ったことはありませんか？ええ、私にはありました。そり...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[人生をリセットできたら、と思ったことはありませんか？<br /><br />ええ、私にはありました。そりゃね、長く生きていれば、あの時、あの選択をしていたら、と思うことの方が多くなります。<br />歳をとればとるほど、選択枠だって狭くなってきますし、冒険とか、決断とか、そういったことに対して、臆病になるものです。<br />ですから、私の答えは、勿論『YES』でした。特にあのことがあってからは、それを随分悔やんだものです。<br /><br />ある日、夢の中で、ひとりの男に問いかけられました。<br />「人生をリセットできたら、と思ったことはありませんか？」<br />「勿論ありますよ！ええ。あります。」<br />「･･･そうですか。ではリセットボタンを差し上げましょう。」<br />「リセットボタン･･･？」<br />「今、あなたの額にあるボタンがそれです。それを押すことによって、今までの人生がリセットされます。始まりは選択できませんが、うまくやればやり直しができますよ。」<br />「･･･？！･･･これか？」<br />「そうです。よく考えて使ってみてください。他の方には見えませんからご安心くださいね･･･。」<br /><br />朝起きて額に手をやると、何かボコッとしたものが手に触れました。鏡で見てみると、私の額には小さなボタンが付いていました。<br />「夢じゃなかったのか？！これが･･･リセットボタン･･･？！」<br />何度見ても、ボタンは額に存在します。触ってみても、それは実感でき、本物だということがわかります。<br />とりあえず、髪の毛で上手く隠しながら、寝室からキッチンに行くと、妻が待ち構えていました。<br />「ちょっとぉ！ご飯炊けてないじゃないのよぉ！どうすんの？！」<br />「ご、ごめんよ。昨日遅かったから忘れちゃって･･･。」<br />「ハァー。そんなんじゃ困るじゃないのよ！」<br />「ゴメン。今すぐ用意するよ。」<br /><br />ボタンを気にしながら、私は朝食の準備を始めました。今となっては、妻に頭が上がらない状態の私には、このような日常は当たり前でした。<br />妻と婚約してすぐ、車で人身事故をおこしてしまった私は、それから人生が変わってしまいました。<br />莫大な慰謝料を請求され、何も知識がなかった私は、臆病な性格が後押しして、被害者と口約束をしてしまい、裁判でうまく弁護ができず、本来なら払うことのない慰謝料が成立してしまったのです。その慰謝料の額は、とても私の安月給で払っていけるものではありませんでした。<br />彼女は広告代理店で働いており、結婚してから退社するはずだったのですが、慰謝料を払っていかなければならなくなってしまったので、引き続き仕事をすることになり、今では、業界でひっぱりだこのウェブデザイナーになっていました。彼女の給料は、私の給料よりもはるかにいいですし、フリーでやりこなしている今、その大半を慰謝料に当ててもらっているので、文句は到底言えないのです。<br /><br />『嗚呼、あの事故さえなかったら･･･。』<br />「また、そんなため息、朝からつかないでよ。何の文句があるの？」<br />「いいじゃないの。慰謝料だって、私の給料があれば、それなりに払える目処がついてるでしょ？！」<br />「そ、そうだね。ほんと感謝してるよ･･･。」<br />そう言うしかありませんでした。<br /><br />そうやっていつもの朝が終わり、会社に出勤すると、同僚が声をかけてきました。<br />「あれ？鈴木さん、どうかしたの？」<br />一瞬、私の顔から血が引くのがわかりました。サササッ、と手で前髪を下ろしていると、<br />「いつもと髪型が違うからさー。何？イメチェン？」<br /><br />どうやら本当に額のボタンは、他の人には見えないみたいでした。特に不自由はないのですが、気になって仕方ありませんでした。まるで、この箱は開けちゃ駄目よ、といわれて、目の前に箱を置かれている気分でした。<br />落ち着かないまま、家に帰ると、いつものように妻はいませんでした。<br />最近、新しく会社に入った若い部下とよく出かけるようになりました。勿論、私には何も言えませんでした。一度、やんわりと聞いたことがあるのですが、すごい目つきで睨まれ、それからは口に出すことはありませんでした。<br /><br />そんな時、決まって昔のことを思い出すのでした。<br />『そう言えば、あの頃は良かったなぁ･･･』<br />私は当時、大きなプロジェクトを成功させるべく、妻が勤めている代理店に何度か足を運んでいました。<br />妻は美人で、周りに一目置かれるような存在の女性でした。初めて会社を訪問したとき、彼女を一目見て、高値の花、という言葉は、彼女の為にあるのだな、と思ったほど衝撃的で、そしてそのままひとめぼれしてしまったのでした。<br />プロジェクトが大詰めになり、最後の打ち合わせの時に、代理店を訪れると、いつものように彼女が出迎えてくれて、緊張した面持ちの私に、<br />『お疲れ様です。契約頑張ってくださいね。』<br />と、微笑んでくれたときほど、幸せだ、と思ったことはなかった記憶があります。<br /><br />それからというもの、あれやこれやといろんな手をつかって、当時ボーイフレンドがたくさんいた彼女の、その中の一人に、やっと入れたのでした。<br />そして、立場もわきまえず、思い切ってプロポーズしたところ、そのプロポーズの言葉が彼女にウケてしまい、とんとんと結婚まで話が進んだのでした。<br /><br />『あの頃は、いろんなことが上手くいってたなぁ･･･』<br />今は、窓際族のように、会社の隅でぼそぼそと仕事をする日々を送っている自分がみじめに感じました。<br />『あの事故さえなかったら。あの事故が私の人生を変えてしまったんだ･･･。』<br /><br />チラリと昨日の夢が脳裏をかすめました。本当なんだろうか？本当にリセットできるのだろうか？<br />おもむろに席を立ち上がり、ビルの屋上へと向かうエレベーターに乗り込みました。<br />屋上に着くと、なるべく人に見られない柵の近くに移動し、空を見上げて、大きく深呼吸をしました。柵に手をかけると、バタバタっと近くに止まっていた鳩が飛び立っていきました。<br /><br />『このボタンを押したら･･･。私もあの鳩のように、自由になれる･･･』<br />吹き上がるビル風で、前髪がフワッと浮き上がりました。そして私は、額に手をやり、静かにボタンを押しました。<br /><br /><br /><br /><br /><br />【テイク：１】<br />「おい！例の資料はできてるんだろうな？今日はヘマできないぞ！このプロジェクトを成功させたら･･･」<br />そうだった、今日は前々から詰めていたプロジェクトの最終打ち合わせ日。これが終わったら･･･これが成功したら･･･彼女に告白するんだ･･･。<br />ピリピリと額がうずめいたような気がした。　が、きっと、極度の緊張のせいだろう。<br />そして今日こそは、言うつもりだ。<br />『こんな僕ですが、君と一緒にいると僕が幸せなので、結婚してください！』<br /><br />どうやら記憶までもリセットされてしまうらしい。<br /><br /><br /><br /><br /><br />【テイク：２】<br />軽い眩暈がした。<br />と、同時に、柵にかけていた両腕がフワリと宙に浮いた、のではなかった。<br />正確に言うと、次の瞬間、柵が外れて、私はビルから重力に逆らうことなく、下へ、下へと落ちていた。<br /><br />薄れ行く意識の中で思った。<br />『そうか、こういうのもありか。結果はリセットだものな･･･。』<br /><br /><br /><br /> ]]>
        
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    <title>語る指と話す口で</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/04/post-6.html" />
    <id>tag:www.musashinor.net,2010:/yamadauca//14.137</id>

    <published>2010-04-06T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-04-05T08:33:11Z</updated>

    <summary>幼馴染の彼女は小学生の頃から徐々に耳が不自由になり、高校入学の頃には完全に聞こえ...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[幼馴染の彼女は小学生の頃から徐々に耳が不自由になり、高校入学の頃には完全に聞こえなくなってしまった。<br />
彼女は耳が聞こえなくても、『口が読める』ので普通の高校に私と通っていた。<br />
<br />
彼女が完全に耳が聞こえなくなった時、手話を覚えなくてはならなくなって、その勉強に付き合っていたので自然に、私は手話を彼女と同時に覚えた。<br />そし
て、聞こえないことで不自由する場合、私は何の感情も持たず、彼女の耳となることを当たり前と思って助けながら接してきた。<br />
<br />
私と彼女は高校を卒業し進学したのだが、大学は別になり、お互い思うところあって別々の大学へ通うことになった。ある意味、私たちは家族よりも多くの言葉を『指』で話した。<br />
<br />
私は大学のサークルで知り合った彼と付き合うことになった。<br />彼女は自分のことのように喜んでくれた。私に彼氏ができて、彼女は将来、翻訳の仕事がした
いと言って、大学の勉強以外でも勉強をしなくてはならなくて、今までのように、2人で会うことがあまりなくなってしまった。<br />
<br />
今まで、私たちはあまり異性に感情を持つことがなかった。<br />どんな時も、2人でいることのほうが楽しかったし、充実していたからだ。<br />
<br />
何故、ここで私が彼と付き合うようになったかというと、私のことを、彼女以外の人が興味を持ってくれたということに、喜びを感じたからだった。<br />
彼はとても優しい人だった。私のことを気遣い、同じ歳とは思えないくらい大人の部分もあって、彼と一緒にいる時間は、とても心地よいものだった。<br />
その反面、私はというと、彼に対して素直になれない部分があった。私は今まで、彼女以外に自分自身を曝け出すこともなく、自分自身のことを話すこともなかったからだった。<br />
<br />
正直、どうしていいかわからなかった。異性への好きという感情に戸惑っていた。<br />
<br />
彼女には素直に伝えられることが、彼には伝えられない。彼に「どうしたの？」と言われると、私は黙ってうつむくことしかできなかった。<br />
時には、気持ちとは正反対の言葉を口にしてしまう場合もあったり、意味もなく冷たくしてしまったりすることもあった。<br />
<br />
そんな時、決まって彼は、黙ったまま、困ったような顔をするのだった。そうなると、私はその場にいるのが苦痛になり、何も言わず、立ち去ってしまうのだった。<br />
<br />
彼と、楽しいだけではない時間を過ごすことが多くなって、そんな中で、彼女と会う約束をした。<br />
<br />
久しぶりに会う彼女は、耳が聞こえなくても、そのハンディを正面から受け止めて、以前よりもはつらつとしていた。<br />
私がいない場所で、彼女がちゃんと生活している、ということが、ちょっとだけ寂しい、などと思うくらいだった。<br />
<br />
『久しぶり！元気だった？』<br />
「うん。それなりに・・・・」<br />
『・・・何かあるみたいね？（笑）』<br />
「ははは・・・、わかる？」<br />
<br />
『そりゃわかるよ。長い付き合いだもの。どうしたの？』<br />
「彼にどうやって接したらいいかわからないの。」<br />
『というと？』<br />
「好きなんだけどね、冷たくしちゃったりするの。素直になれなかったり。」<br />
<br />
『なるほどね。それ、何となくわかるわ。』<br />
<br />
「え？」<br />
『私と一緒にいた時間が長かったからかな。いつも私には何でも話すけれど、他の人にはそうじゃなかったじゃない？』<br />
<br />
「え？そうだっけかな？」<br />
『ふふ。（笑）そうだよ。どうしてだかわかる？』<br />
「・・・わからないや。」<br />
<br />
『私とは、言葉で会話できないからだよ。』<br />
<br />
「え？どういうこと？」<br />
『私とは手話で会話するでしょ？だからね、照れくさいことや、自分の感情を、素直に表現しやすいんだよ。』<br />
<br />
「・・・」<br />
<br />
『もう自分が話せた頃のことは、なかなか思い出せないけれど、でもね、私、話せた頃の方が、今よりも、自分を表現するのは下手だったと思う。<br />
言葉が話せる とね、沈黙していても、相手はわかってくれてるだろう、とか、思ったりしちゃうのよね。でも、耳が聞こえないと、自分の指で、それらを伝えなくちゃいけな い、って思うのよ。<br />
それこそ沈黙してたら、何も届かないからさ。あとね、言葉っていうのは、その口から、音声となって発せられるじゃない？そうすると、その音自体 に、注意深くなってしまって、それで何も言えなくなってしまう、ってことあるんじゃないかな？』<br />
<br />
「・・・」<br />
<br />
『どうしたの？あなたは両手で表現することもできるし、言葉で表現することもできるじゃないの？<br />
全てを使って、全てを伝える努力をしなくちゃ。伝えなくちゃ、何もわからないのよ？何も始まらないのよ？』<br />
<br />
そう言って、彼女は笑った。そして、最後に彼女の指はこう語った。<br />
<br />
『人間はね、唯一、言葉でコミュニケーションすることができる動物なんだって。折角、人間に産まれたんだから、人間らしく生きなくちゃ！』<br />
<br />
そう言って、ポンッと、私の肩に置いた彼女の手から、伝わってきた。<br />
そうだ、私はまだ、彼に伝えるべきことがたくさんあるんだった。<br />
<br />
ありがと！と言って、彼女に手を振り、私は彼の元へ走った。<br />
<br />
もう迷うこともない。迷ったとしても、伝えよう。<br />
今度は、伝わるまで伝えよう。両手と言葉と全身で。<br /><br /><br /> ]]>
        
    </content>
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    <title>オレの毎日</title>
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    <published>2010-03-30T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-03-30T09:33:27Z</updated>

    <summary>朝の仕事を済ませて、暫くゆっくりしていた。午前中は目が回るほど、やたらと忙しいが...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[朝の仕事を済ませて、暫くゆっくりしていた。午前中は目が回るほど、やたらと忙しいが、家族が出て行った後の、日中のこのあたりの時間帯は、家に誰もいなくなるので、とても静かでゆっくりできる。<br />ちょっとこの場所は、湿気が多いのが気になるけれど。<a href="http://moso24.blogspot.com/2004/06/blog-post_16.html" name="sequel"></a><a href="http://moso24.blogspot.com/2004/06/blog-post_16.html" name="sequel"></a>                           　オレがこの家に来てから、3年が経過しようとしている。<br />最初は戸惑いがちに接していたが、勝手がわかった今となっては、ガンガンにコキ使われている。<br />それはまあ、嬉しいことでもあるが。<br /><br />
このオレのひとときの静寂をかき消してくれるのは、長男の一郎。<br />
バタン。<br /><br />
「ただいまー！急げ！急げ！」<br />
『おかえり。例のもの、早く出しとかないと、また怒られるぞ。』<br />
「あ！そうだった。えーっと、コレとコレとコレとー。」<br />
『うわ！今日も派手にやったなあ。すげえなこれ。どうやったら、こんなになんだよ。あーあ、オイ！別にしとけよ！また怒られるぞ！おーい！』<br />
行ってしまった。やれやれ。あの顔を最初に見なくちゃなんないのは、オレなのになあ。いくらなんでも、気分が悪くなるぜ。<br />
おっと、お帰りになったみたいだな。<br />
「ただいまー。一郎〜？いるの〜？あらやだ、もう出かけたのかしら？まったく落ち着きないんだから･･･。」<br />
バタン。<br /><br />
『お帰りなさいませ。』<br />
「今日は暑いわねえ･･･。」<br />
『あのですね、またですね、その一郎くんが･･･。』<br />
「アラ！何これ！まーったく！一郎ね！？いつも別にしときなさい、って言ってるのに！何度言っても駄目なんだから！」<br />
『はあ･･･。私も散々言ったんですがねえ。』<br />
「しょうがないわねえ・・・。うわ、臭い！んっとにもう･･･。」<br />
『ええ、私も臭かったです。はい。』<br />
「いけない！もうこんな時間？！夕飯の支度しなくっちゃ！パパが帰って来ちゃうわ！」<br />
『お、奥様？！このままですか？！おーい！』<br />
ちっ、行っちまったぜ。やれやれ･･･。やっぱ親子だなあ。おっと、旦那様のお帰りだぜ。<br />
「ただいまー。はー疲れたー。」<br />
「お帰りなさい、あなた。ご飯まだなの。先にお風呂入って下さる？」<br />
「おお、わかった。」<br />
バタン。<br /><br />
『お帰りなさいませ、旦那様。』<br />
「フー、どっこいしょっと。」<br />
『今日もお疲れ様ですね。』<br />
「･･･ちょっと匂うかなぁ？」<br />
『はい、お預かりしますよ。ん？！な、何ですかこの匂いわ？！も、もしかして、香水？！いや、石鹸？！』<br />
「んー、ちとヤバイかなぁ･･･。お？これは一郎のユニフォームか。うわ！クセェ！よし、これに混ぜておくか･･･。」<br />
『ちょ！ちょっと！旦那様！そんなことしたら、Yシャツが汚れますよ！アイヤー！止めて下さい！いくら私が優秀だとしても、そんな汚れは落とせませんよ！』<br />
「しめしめ、これで丁度いい♪」<br />
『だ、旦那様〜！！』<br />
まずいな･･･。何だか奥様に秘密ができてしまった･･･。しかし、どういうことなんだ？！<br />
「ハー、スッキリしたー。別の意味でもスッキリ。なんちって♪」<br />
『･･･旦那様。聞き捨てなりませんな、それは。一体どういうことなんですかね？！』<br />
「フンフフフ〜ン♪」<br />
『鼻歌唄ってる場合じゃないでしょう！ああっ！旦那様〜！』<br />
まったく･･･。オレには理解できないぜ･･･。あんな素敵な奥様がいるってのに･･･。<br />
おや？長女の可愛い可愛い、花子ちゃんが帰って来たみたいだ♪<br />
「ただいまー。あたし今日、ご飯いらないよー。ダイエット中だから。」<br />
「あらそう。じゃあ、一郎が帰ってくる前に、お風呂入っちゃいなさい。お父さんはもう入ったから。」<br />
「ハーイ♪」<br />
バタン。<br /><br />
『花子ちゃんお帰り〜♪』<br />
「･･･やれやれ。まったく、タカシのやつ。フフッ。」<br />
『え？タカシって誰のこと？』<br />
「やっぱり！こんなとこに付いてるう！」<br />
『あああああ！なっ、なっ、なーーー！そ、それわ？！』<br />
「やーねーぇ。エッチなんだからあ♪」<br />
『ああああ、ひどい。ひどすぎる。オレの花子ちゃんに･･･。』<br />
「激しかったなあ♪フフッ。」<br />
『止めろぉ！止めてくれぇ！花子ちゃんが、そんなこと言うなぁぁぁ！』<br />
ヒック、ヒック、グスン、グスン。でも、花子ちゃんのブラウスはいい匂いだなぁ･･･。<br />
「ただいまー！」<br />
「あら、一郎おかえり。」<br />
「飯、飯ー。腹減ったー。」<br />
「一郎！あれほど母さん言ってるでしょ？！汚れたものはちゃんとネットに入れて分けておきなさいって！他の洗濯物が臭くなるでしょ！」<br />
「まあまあ、母さん、そう怒らなくてもいいだろうが。」<br />
「お父さんは黙ってて下さい。他のものに汚れが付いちゃうと、なかなか落ちないのよー。」<br />
「モグモグ。ごちそーさまー！俺、今日部活で風呂入ったから、もう寝るぞー。」<br />
「待ちなさい！一郎〜！」<br />
「母さん似だな、あいつは。ハッハッハ！（ホッ）」<br />
おや、何だかダイニングが騒がしいなあ。一郎くんが帰って来たのかな？<br />
「お母さーん、お風呂出たよ。」<br />
「･･･まったく。わかったわ。次入るから、そのままでいいわよ。」<br />
バタン。<br /><br />
『奥様、お疲れ様ですねえ。』<br />
「ふぅー。そうそう、えっと･･･。コレコレ。（ガサゴソ）ちょっと派手かしらねえ？」<br />
『うわ！！！な、何ですかそれわ！』<br />
「これでお父さんも･･･。フフッ♪」<br />
『ちょっと･･･。その歳で、赤のヒモパンですかぁ･･･。うーん。考えさせられますなあ。』<br />
「その前に、コッソリ洗わなくっちゃ♪」<br />
『うわー！オレ、こんなの今まで洗ったことねえよ！ウヒーィ！は、初体験♪』<br /><br />
いやはや、家族の洗濯物って、いろいろありますなあ。<br />洗濯機も楽じゃないぜ。明日も頑張ろうっと。<br /><br /><br /><a href="http://googleads.g.doubleclick.net/aclk?sa=l&amp;ai=BSyDMwiZMS764CY-gvwO9q_jdD6DXroABxKXf5QzAjbcBgNrECRABGAMgzaKdFygDOABQufvIj_j_____AWCJq86EmBSgAYzR1PIDsgENbW9zby5qdWdlbS5jY8gBAdoBHGh0dHA6Ly9tb3NvLmp1Z2VtLmNjLz9laWQ9MzKAAgGpAmPDMvIeRkc-yAKg8P8QqAMB9QMIAACE&amp;num=3&amp;sig=AGiWqtyyhCfRGjiOroHy5X19SygXZ1cjnw&amp;client=ca-paperboy-jugem_js&amp;adurl=http://www.redbaron.co.jp/buy/foreign.html" style="text-decoration: none;"><span style="font-size: 14px; font-weight: bold; line-height: 200%;"></span></a> ]]>
        
    </content>
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    <title>扉の向こうの毎日</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/03/post-4.html" />
    <id>tag:www.musashinor.net,2010:/yamadauca//14.125</id>

    <published>2010-03-23T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-03-23T12:14:05Z</updated>

    <summary>ジリリリリリリリ･･･  ジリリリイリリリ･･･ 寝ぼけた頭を垂れながら、目覚ま...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[<div class="entry_title">ジリリリリリリリ･･･<br />
</div><div class="jgm_entry_desc_mark"> ジリリリイリリリ･･･<br />
<br />
寝ぼけた頭を垂れながら、目覚ましのボタンを押す。<br />
今日は月曜日。まだ、起きていない頭の中では、『会社・会社・会社･･･』という単語のみが、ぐるぐる回っている。<br /><br /><a href="http://moso24.blogspot.com/2004/06/blog-post_19.html" name="sequel"></a></div><a href="http://moso24.blogspot.com/2004/06/blog-post_19.html" name="sequel"></a> 暫くベッドの中でまどろんでいて、うつらうつらと朝日を目の前に、脳が覚醒していくのがわかる。その隣で陰になって見にくくなっていた目覚ましの文字盤。<br />
ガバッ！と一気に布団を剥いで、「遅刻！」と叫んだ。そんな自分の声に驚きながら、急いでキッチンに向かう。パジャマの裾を踏みそうになって、あわててズボンを捲り上げる。<br />
コーヒーメーカーに水を入れて、スイッチを押す。それから、冷蔵庫を開けて、玉子をひとつと、パンを一切れ取り出す。パンはそのままトースターの中へ。タイマーは2分弱。玉子は小ボールの中に割って、そのまま放っておく。<br /><br />
キッチンの方に向かい直って、側面に掛けてあるフライパンを、コンロの上に置く。<br />
コポコポコポ･･･という音と共に、コーヒー豆のいい匂いがしてきた。<br />
朝食スタンバイ完了。<br />
足早に洗面所へ駆け込み、ユニットバスの扉の段差に足の甲をぶつけた。イタタタタ、と片足ではねながら洗面台へ。目を覚ますために、ジャブジャブと顔を洗う。鏡に向かって、肌のチェック。うん、調子はまあまあ。<br />
タオルを首にかけたまま、キッチンに戻って、コンロのスイッチをひねる。<br />
ボールに移した玉子を、カチャカチャとかきまぜながら、リビングに移動して、テレビのスイッチを入れる。<br />
背後で「チーン」という音と共に、パンが焼きあがった匂いが漂う。あわててキッチンに戻って、ボールの玉子をフライパンに移す。<br />
玉子をかき混ぜながら、何か、残り物はなかったっけ、と、冷蔵庫の扉を開けると、タッパーに入っていたカレーに目が止まる。<br /><br />
『そうだ、今日の晩御飯、この間の残りのカレーにしようっと。』<br /><br />
出来上がった朝食を皿に移し、珈琲を片手に、ソファへと移動する。つけっぱなしだったテレビの画面は、世界水泳での新記録の話題で持ちきりだった。<br />
ほんの2・3秒のよそ見で、パジャマの裾をふんづけてしまった。ガク、っと斜めに傾いた体の先の珈琲が、辺り一面に飛び散った。<br />
<br />
次の瞬間、「ガチャリ」という音と同時に、目の前が真っ暗になった。<br />
<br />
「ん？･･･珈琲の匂いがしないか？」<br />
「え？珈琲ですか？･･･匂いませんけど...。先生、ここは無菌室ですよ？」<br />
「･･･そうだったな。」<br /><br />
たった今、病室の扉を開けた瞬間、ほのかに香ったような気がした。<br />
ふと、横を見ると、患者が眠っている。<br />
突然、いつもの朝を迎えている最中に、倒れたまま、意識不明になったらしい。<br />
そして今日までの約5年、原因不明のまま、回復する見通しもなく、ただ、眠るように、生きている。<br /><br />
『そういえば、この間は、カレーの匂いがしたような気がしたんだけれど...。』<br />
<br />そう思いながら、診察を終え、病室を出て行く。<br />
<br />
静かに閉じられた扉の「ガチャリ」という音と同時に、彼女の視界が戻った。<br />
辺り一面に、飛び散った珈琲の残骸。そうやってまた今日も、彼女の1日が続いていく。<br /><br /><br /><br />]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>左目・後編</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/03/post-3.html" />
    <id>tag:www.musashinor.net,2010:/yamadauca//14.117</id>

    <published>2010-03-16T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-03-22T13:18:27Z</updated>

    <summary>朝になり、普通に目覚め、真っ先に朝日の中で鏡を覗き込んでみた。眼球は色を取り戻し...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[朝になり、普通に目覚め、真っ先に朝日の中で鏡を覗き込んでみた。眼球は色を取り戻し、目の下のクマは、きれいさっぱりなくなっていた。<br />
また、元の生活に戻ってしまった、という気が漠然とした。<br />
そういえばテスト中だったのに、結局勉強も何もしていない現実に気づき、慌てて家を飛び出した。<br />
<br />
テストが始まる前に少しでも脳みそに入れ込もうと、休み時間になると教科書を片手にノートとにらめっこをしていた。朝からこんな調子でせっぱ詰まっていたせいか、あまりにも集中していて、瞬きをするのを忘れていた。<br />
<br />
あと一科目、というときの休み時間のことだった。一瞬、視野がグラリと揺れたような気がした。頭がガンガンと痛くなってくる。目が疲れたせいかと思い、こめかみのあたりを指で揉んでみた。<br />
<br />
グググッと瞳が動く感じがした。あっ、と思った時には、もう左目はその位置になかった。音もなく外れ落ちた左目は、私の膝の上でぴくりとも動かず、留まっていた。<br />
<br />
そんな状況でも私はやけに冷静だった。うつむいたままポケットからハンカチを取り出し、そっと左目を包み込むと、静かに席を立ち、友達に具合が悪いから保健室に行く、と告げて、足早に教室を去った。<br />
<br />
保健の先生に、具合が悪いので少し寝かせて欲しいと言い、暫く静かにベッドで横になっていた。気持ちが逸る。不安な中でも私はまた、左目が外れてくれる
ことを期待していたからだ。昨日部室で覗いた光景。私は鈴木君のことを、また、あんなふうに見てみたいと思ってしまっていた。<br />
<br />
テストが終わる前に、部室に行かなくては。<br />
保健の先生にやはり具合が良くないので早退したいと告げると、顔色が良くなかったせいか、先生もそうしなさい、と言ってくれた。もうテストが始まっているから担任の先生に伝えてもらうことにして、そのまま早退することにした。<br />
<br />
私は教室に荷物を取りに行くこともせず、下駄箱に向かうわけでもなく、人目を避けながら、サッカー部の部室へと急いだ。ちょっと埃っぽい部室には、誰も居るはずもなく、少し散らかってはいるものの閑散としていた。<br />
私は昨日のことを思い出しながら、椅子を動かしてロッカーの前へと移動させた。<br />
たしか、この辺りだったな･･･、そういって隠しカメラを仕掛けるかのように位置を確認し、左目をそっとロッカーの上に置くと、何事もなかったかのように部室を後にした。<br />
<br />
そろそろテストも終わって、サッカー部は放課後の練習に入るだろう、という時間になっていた。<br />
家路を辿りながら、瞬きをするたびに、別の光景が頭の中を一瞬フラッシュバックする。瞬時に目の前で切り替わる世界に、眩暈を隠せないまま、なんとか家へと辿り着いた。<br />
<br />
母はまだ帰ってきていない。自分の部屋に入り、制服を着替えて、ごろりとベッドに横になった。<br />
<br />
天井を暫く見つめていた。このまま深く瞳を閉じれば、またあの光景が目の前に広がる。そんな当たり前でない事実が目の前にあるというのに、私はとても冷静だった。 <br />
壁にかかっている時計にちらりと視線を移す。辺りはほんのり暗くなってきていて、そろそろ部活も終わりの時刻に近づいていた。<br />
<br />
私はそのままベッドの上で、ゆっくりと瞳を閉じた。暗闇は一瞬でグワッと眩しいほどの明かりが私の目の前に広がった。<br />
<br />
部室の扉が開いた。ぞろぞろと部員が汗で光った顔をしながら入ってくる。匂いはしないけれど、匂いが見えるような気がするほど、熱気が瞳を通して伝わってきた。<br />
疲れた顔をした鈴木君が視野に入ってきた。ドクリと心臓に血が流れた。逸る鼓動を抑えつつ、私はじっとそのまま彼を見続けた。<br />
しばらくすると、川口君が鈴木君の近くに寄ってきて、白い封筒を見せた。鈴木君の表情が一瞬変わった。小さくてよく見えないけれど、可愛らしいピンク色の封筒の宛名の部分に、鈴木という文字が書いてあるのが見えた。<br />
<br />
川口君がそのまま鈴木君に封筒を渡そうとして、ヒュッと上に掲げる。周りにいる部員たちは、鈴木君をひやかしているみたいだ。<br />
状況が何となくわかりはじめた。あれはラブレターだ。鈴木君宛に誰かが書いたものだ。一体誰だろう？同じサッカー部のマネージャーかもしれない。思い当たるふしはたくさんありすぎた。鼓動が更に早くなるのがわかった。<br />
<br />
暫く2人でもめていたが、なかなか手紙を渡さない川口君に痺れをきらした鈴木君が、川口君を強く突き飛ばし、そして喧嘩が始まった。<br />
決して広くない部室内でバタバタと2人が暴れだした。<br />
<br />
次の瞬間、またしても視界がぐらりと揺れた。ロッカーに誰かがぶつかったのだろう。ユラ、ユラ、と左右に揺れたあと、次の衝撃で、私の視野はグルグルと回りだした。<br />
<br />
吐き気がして眼を開けた。何回も前転をして、眼が回ってしまったように頭が重い。少し深呼吸をして、また瞳を閉じた。<br />
<br />
天井が見えた。でも少しおかしい。円く切り取られた天井が見える。ここがロッカーの上じゃないことは確かだ。<br />
その風景を何者かが遮った。一瞬見えた鈴木君の顔。その口の端からは血が出ていた。喧嘩はもう終わったらしい。<br />
<br />
ほっとするのもつかの間、鈴木君の顔がユラユラと見えなくなっていく。どこかで見た光景。そうだ、プールの中だ、と思っていると、円く見えていた明かりは、どんどん小さくなっていった。<br />
<br />
度重なる吐き気に、頭を抱えて暫く横になったまま眼を閉じていた。<br />
そのまま眠ってしまったのだろう。どれくらい時間が経ったのだろうか？下の部屋では、母が夕飯を作っている気配がする。<br />
<br />
慌てて瞳を閉じてみたが何も見えない。何度瞳を閉じても変わらない風景は、真っ暗な闇がそこにあるだけで、それが闇なのかただの瞼の裏側なのか、わからなくなってしまっていた。<br />
ベッドから起き上がって、姿鏡に映った自分の顔を見て、言葉にならない悲鳴を上げた。<br />
私の顔の左側の本来左目がある場所は、どす黒く変色し、ポカリと穴があいたままになっていた。<br />
<br />
母には忘れ物をしたと告げ、足早に学校へ向かい、サッカー部の部室に向かった。鍵を開ける手が震えてしまって、なかなか鍵穴に鍵が入らない。<br />
<br />
急いで扉を開けて、ロッカーの上を一通りさがすけれど、そこにはなかった。ロッカーの横にある洗面台の蛇口から、ピチョン、とひとつ、雫が垂れる音がした。<br />
<br />
私の左目はどこにあるのだろう。早く探さなくては。<br />
誰か、私の左目を知りませんか？ ]]>
        
    </content>
</entry>

<entry>
    <title>左目・前編</title>
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    <published>2010-03-09T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-03-08T16:26:43Z</updated>

    <summary>朝から頭の左側が、なんともいえない鈍痛に包まれている。 朝食を半分ほど食べ終わっ...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
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        <category term="lefteye" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[<div class="jgm_entry_desc_mark">朝から頭の左側が、なんともいえない鈍痛に包まれている。<br />
朝食を半分ほど食べ終わった後、いやけがさして、そのまま学校へ向かった。<br />
<br />
今日はテスト。勿論、勉強なんてしているはずがない。その理由として挙げられるのが、彼の存在だった。<br />
<a href="http://draft.blogger.com/post-edit.g?blogID=276248624267976516&amp;postID=2855328530269045736" name="sequel"></a><br />
</div><a href="http://draft.blogger.com/post-edit.g?blogID=276248624267976516&amp;postID=2855328530269045736" name="sequel"></a> 彼は1年生の頃から同じクラスで、サッカー部に所属している。私はマネージャーを務めていて、彼とはそれなりに仲が良い。<br />
最近になって、彼が急にモテはじめた。今年、サッカー部が全国大会に出場して、学校での認知度が上がり、皆が注目するようになったからだ。<br />
<br />
彼はサッカーが上手だった。とりわけ足が速い。ドリブルしながらグラウンドを駆け抜ける姿は、他の誰よりも目立ち、とりわけルックスが良いわけでもないのに、とにかく格好良かった。<br />
誰よりもサッカーが好きで、きつい練習にも耐え、そして仲間に優しく、自分に厳しいところが、徐々に評価されてるのだなと思う。<br />
<br />
私は彼が人気者になる前から、彼のことが好きだった。<br />
練習が終わった後、1人でコツコツと自主練を行っている姿も、ずっと影から見てきた。マネージャーという立場で彼に接してきたけれど、やはり私が一番、彼の近くにいて、彼を見続けてきたと思う。<br />
<br />
最近は、それがはがゆくてしょうがない。<br />
私だってマネージャーじゃなければ、グラウンドの柵の向こうから、友達と一緒に黄色い声援を送ったり、手作りのクッキーやお弁当を作ってきたり、当然のようにしているだろう。ファンとして、そういうことが簡単にできる同級生が、羨ましくてしょうがないのだ。<br />
かと言って、告白する勇気もない。本当は知っているようで、知らないことだってたくさんあるはずだし、もし告白して断られたら、マネージャーだってやっていられなくなる。<br />
<br />
悶々とそんなことを考えているからだろうか、テスト中なのにもかかわらず、頭痛がひどくなってきた。割れるように痛い。<br />
とりあえず、解ける範囲だけやって、保健室にいこうかなと、うつむいて考えている時だった。<br />
<br />
グラリ、と視界が揺れた。地震のような感覚に似た揺れが、直接頭に響く感じがして、吐き気を覚えた。<br />
次の瞬間、だらり、と目の前の机の上に、白いものが垂れ下がっているのが見えた。そしてそれは、ぷつっ、という音がしそうな歯切れのよい動きをして、机の上に転がった。<br />
<br />
静まり返った教室の中での緊張感がそうさせたのか、私の動きはスローモーションになり、こんな現状を把握しているかのように、静かにその転がったものを手に取った。<br />
<br />
それは目だった。<br />
理科室の人体モデルの眼球を取り外して見たことがあったが、まさにその感覚と同じだった。違うのは、私が手にしている眼球は、血が通っているかのように、温かいことだけだった。<br />
<br />
はっ、と我に返り、テスト中だったことを思い出した。<br />
手のひらの上に乗っている目を、そうっと握って隠し、辺りを静かに見回すと、皆何事もなかったように、テストの答案用紙に目を落としている。<br />
<br />
今頃、胸がドキドキしてきた。そして、震える体を落ち着かせながら、見つからないように何気なく左手を開くと、やはりそこには先ほどの目があった。<br />
これは、私の目だろうか。逆の手で、自分の顔の瞳の部分に手を当ててみた。瞑ったまぶたの上からそっと触ってみると、右目には眼球の存在を感じる。左目は、まあるく穴が空いている、空洞の手触りがした。<br />
<br />
ワンレングスの髪型は好都合だった。サササッ、と左に掻きあげ、左目を隠して、先生に具合が悪いことを告げた。<br />
<br />
頭が痛いのは、いつの間にか治っていた。保健の先生に、具合が悪いので暫く寝かせて欲しいと告げ、足早にベッドの方へと移動し、目隠しのカーテンを引いた。<br />
<br />
瞳を握った手が汗ばんでいるのに気づいて、その左目をベッドの上に置き、瞳を閉じて深く安堵の深呼吸をした。<br />
両目、を瞑っていたはずだった、が、私の目の前には座高より低い位置の視界が広がっていた。それはベッドに寝ている状態の視界だった。<br />
<br />
おかしいと思い、目を開けると、ベッドに腰を掛けている位置の視界が、目の前に広がっている。<br />
おもむろにベッドの上に置いた左目に視線を移し、もしかして、と思いながら、片目ずつ瞑ってみると、案の定、こういうことだった。<br />
<br />
右目が開いている状態だと、右目からの視野が目の前に広がる。右目を閉じると、外れてしまった左目からの視野が目の前に広がるのだ。<br />
外れた左目を手のひらに置き、右目を瞑ってみた。左目を乗せた手を左右上下に動かしてみると、まるでハンディービデオで録画した風景を見ているような状態になった。<br />
<br />
状況が状況なだけに、驚きはしたが、何だか心が躍った。<br />
ベッドから立ち上がり、カーテンの隙間から左目をちょこっとだけ覗かせて、右目を閉じてみる。部屋の奥にある机に座っている先生が、携帯をカチャカチャ
といじっている。どうやらメールのやりとりをしているようだ。いつもは私たちに、携帯のメールは禁止だなんて言ってるくせに。<br />
<br />
ベッドに腰を掛けなおして、左目を見つめる。そうしているうちに私は、とても面白いことを考え付いてしまった。<br />
<br />
授業が終わったことを告げるチャイムと同時に、勢い良く保健室のベッドのカーテンを開けてた。<br />
慌てて携帯を隠す先生をよそに、軽く会釈をすると、保健室を後にした。<br />
<br />
左目はポケットの中に入れて、小走りに向かったのは、サッカー部の部室だった。<br />
中では部員たちがザワザワと音を立てながら着替えをしている最中だった。見つからないように、部室のプレハブの影に隠れて、皆が出て行くのを待った。<br />
暫くして部室から物音が聞こえなくなったのを確認すると、そうっと部屋に入った。<br />
さっきまで、たくさんの人数の部員たちが、部活の用意をしていた光景が広がっている。開け放たれたままのロッカーや、出しっぱなしのタオルと制服、サッカーボール入れのボールは、半分以上なくなっていた。<br />
<br />
やれやれ、と思いながら、一通り片付ける。その最中に我に返って、左目をポケットから取り出した。<br />
<br />
そうだった、これこれ。<br />
くるり、と振り向いて、まっすぐロッカーへと歩き出す。鈴木、と書かれたロッカーの前に立ち止まって、キョロキョロと周りを見渡した。そしてロッカーと斜向かいの部室の壁に近づき、椅子を使って位置をあわせながら、柱と柱を支えている桟の上に、左目を置いた。<br />
右目をつぶって確認してみる。 <br />
いい具合に鈴木君のロッカーを、左目の視野が捕らえていた。<br />
<br />
足早に部室を出ると、体育着に着替えて、グラウンドへ向かった。そこではもう、皆が練習の中盤に差し掛かっていた。まずはベンチにある救急箱から眼帯を取
り出して左目にあて、これでよしと胸を撫で下ろした。後輩のマネージャーに『ごめん』と軽く告げ、そしていつものように放課後を過ごした。<br />
<br />
部活が終わって、着替え終わったマネージャー達が「お疲れ様〜」といいながら、次々と部屋を後にする中、ロッカーの中を片付けるふりをしながら、最後まで残っていた。<br />
静かになった部屋のなかで、ドキドキする心臓の音を聞きながら、ひとつ深呼吸を深くして、右目を閉じてみた。<br />
<br />
ぶわっ、と視野が一変し、男子部室の光景が目の前に広がった。<br />
皆が話をしながら、練習着から制服へと着替えている。ロッカーの横にある洗面台で頭を洗っているものもいた。<br />
<br />
会話が聞こえるわけではないので、いまいち物足りないものがあるが、こんなふうに部室を覗き見するなんて、普通だったらできないことだ。<br />
私は黄色い声援を送っているファンより、鈴木君のことを知ることができるような気がして、とても嬉しかった。<br />
<br />
ばさり、と鈴木君が脱ぎ捨てた練習着の下から覗いた肉体は、意外に胸板が厚くて、頼もしかった。目を閉じている自分の頬が赤くなるのがわかった。<br />
<br />
最後の一人が部室を後にしたのを確認してから、私は男子部室へと向かった。<br />
もうかなり遅い時間だ。誰かが戻ってくることもないだろう。スペアキーを取り出して、扉を開けると、椅子を使って左目を桟から下ろした。<br />
<br />
家に帰り、自分の部屋へ入ると、左目を机の上に置いた。制服を脱いで、部屋着に着替える。今日はいろいろあったな、と思いながら、とんでもないことだと、改めて思いなおした。<br />
<br />
昼間は面白い、と思っているばかりだったけれど、この外れた左目は一体、どうなってしまうんだろう。外れたままなのだろうか。それはそれで不具合が生じる。<br />
机に座って左目を見ると、朝よりも少しだけ黄ばんでいるような気がした。例えるなら、朝、新鮮だった野菜が、夕方になってしおれてきてしまっているような状態だった。<br />
<br />
左目を見つめながら考えていると、下から母の声が聞こえた。どうやら夕飯の支度ができたらしい。流石に母親は誤魔化せないだろう。<br />
私はおもむろに机の上の左目を、元の場所、顔の左目の部分に入れなおしてみた。<br />
<br />
ゴリゴリ、グリグリという、変な感触と共に、暫く動いていた眼球が、突然動きを止めると、テレビのスイッチを入れた時のように、ぱぁっと視野が明るくなった。<br />
そして両目の視野が戻ったのがわかった。眼球は外れる様子もなく、そのまま顔に留まっていた。私は胸を撫で下ろし、ひと安心すると台所へと向かった。<a href="http://googleads.g.doubleclick.net/aclk?sa=l&amp;ai=BKowUXChMS6T5B5zWvgOy2uybBqC60pQByPnspwXAjbcBgLbcBRABGAMgzaKdFygCOABQg7OK2fn_____AWCJq86EmBSyAQ1tb3NvLmp1Z2VtLmNjyAEB2gEcaHR0cDovL21vc28uanVnZW0uY2MvP2VpZD0zN6kCY8My8h5GRz6oAwHoA8YE6AP2AegDjgLoA_MC9QMIAACE&amp;num=3&amp;sig=AGiWqtxBRO86kMM9ZNxN5JjqXzX3Yz3l8g&amp;client=ca-paperboy-jugem_js&amp;adurl=http://www.stepone-kagu.com" style="text-decoration: none;"><span style="font-size: 14px; font-weight: bold; line-height: 200%;"></span></a><br />
<br />
<br />
<div class="jgm_entry_desc_mark">何事もなかったかのように、ダイニングテーブルに座り、テレビを見るふりをしながら、母と顔をあわせないようにしていた。<br />
<br />
「あら、あんた、左目、どうしたの？」<br />
「えっ？」<br />
「何か、目の下にすごいクマができてるわよ。それに、左目がすごいくすんだ色してるわ。」<a href="http://draft.blogger.com/post-edit.g?blogID=276248624267976516&amp;postID=2855328530269045736" name="sequel"></a><br />
</div><a href="http://draft.blogger.com/post-edit.g?blogID=276248624267976516&amp;postID=2855328530269045736" name="sequel"></a>                           「あー、今日、部活でボールが当たっちゃったからかな？」<br />
「あら、そうなの？ちょっと病院にでも行って、見てもらいなさいよ。」<br />
「うん、明日ひどかったらそうするよ･･･。ごちそうさま。」<br />
<br />
肝が冷えるとはこういうことを言うのだろう。<br />
普通に会話するのが精一杯だった。足早に部屋に戻り、もう一度明るいところで鏡を見ると、確かに母が言ったように、目の下にクマができていて、左目もかなりくすんだ色になっていた。<br />
<br />
長い時間、眼球を外していると、やはり栄養が回らないのだろうか。実際、眼球を戻したとき、左目に何かが流れ込むような気がした。とにかく眼球が元に戻
ることを祈った。同時に、眼球が元に戻ってしまったことに対して、少々がっかりもした。これでもう、あのスリルを味わえないのか、と思うと、何だか惜しい
気がした。<br /><br /><br /><br />つづく<br />
 ]]>
        
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    <title>尋常じゃない病</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/03/post-1.html" />
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    <published>2010-03-02T11:00:00Z</published>
    <updated>2010-03-01T13:28:02Z</updated>

    <summary>一枚のレントゲン写真を見て、担当医の顔が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。診察...</summary>
    <author>
        <name>ヤマダユカコ</name>
        
    </author>
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[<div class="jgm_entry_desc_mark">一枚のレントゲン写真を見て、担当医の顔が一瞬曇ったのを、私は見逃さなかった。<br />診察室で、看護婦と担当医と僕の、その3人の間に、小さな沈黙が訪れた。<br />
<br />担当医は困惑しているようだ。検査結果をどう私に伝えようか、と、悩んでいるからだろう。<a href="http://moso24.blogspot.com/2004/06/blog-post_22.html" name="sequel"></a></div><a href="http://moso24.blogspot.com/2004/06/blog-post_22.html" name="sequel"></a> それもそのはず、私は医者こそならぬが東洋医学の世界では、気孔師として名を知らぬものがいないほどの実力の持ち主として、西洋医学の人間にも、それなりに知られている人物だからだ。<br /><br />
中国屈指の気孔師の元、その才能を見出され、3歳という若さで、初の弟子入りを認めらてから、天より授かったこの二の腕は、ゴッドハンドと呼ばれ、数々の病に侵されている人々を救ってきた。<br /><br />
私の手より、治療される人物は、患部が一度、ひどく悪化する。これは、所謂「好転反応」というもので、漢方の世界や、温泉治療など、身近なところでも、
皆が軽い体験はしているはずなのだが、私の気孔力は並外れたもので、その好転反応が強烈に現れる為、それにより急激に衰弱するという特徴が、大げさにメ
ディアで取り上げられたことで、その名を知られたのだった。<br /><br />
世界中の人々を救ってきたほどの、実力のある私が、自分の体の変化に気づかないわけがなかった。<br /><br />
自分自身に気孔を施しつつ、生きてはきたが、このところ、疲れが取れず、やたらと喉が渇く。<br />そして、微熱が続き、体のふしぶしに痛みを感じていた。<br /><br />
「先生のような方に、実に言いにくい検査結果なのですが･･･。どうやら、癌のようですね。この辺りのレントゲンの影が･･･」<br />
この一言で、私の病名は明らかとなった。<br />癌だ。<br />まさか、私が？と、疑いたくなる衝動を押さえつつ話を聞いてはいたが、それは上の空になっていた。<br /><br />
「それも、新種の癌のようです。こんな状態は、今まで見たことがありません。全身に均一に転移している状態です。すぐに精密検査を行い、治療に入らないと･･･」<br /><br />
最後まで説明を聞くことはなかった。戸惑い、呼び止める担当医と看護婦をよそに、診察室を後にした。<br /><br />
『癌』と聞いた瞬間に、何かが私の中で、弾け飛んだような気がした。<br />
もう、先は長くないのだろう。もって半年、というところだ。<br />
そんな風に考えると、悲しみを通り越して、何だか笑いが込み上げてきた。<br /><br />
私が何十年も苦労しつつ築き上げてきた実績とプライドが、いとも簡単に崩れ落ちていった。<br /><br />
3歳の頃から今日まで、気孔の世界で生きてきた。家族がいるわけでもなく、気孔以外の世界は、何もないと言っても過言ではなかった。そんな自分の人生
が、滑稽に思えて仕方がなかった。人生とは何なのだろう、などと、答えにならぬ答えを求め、頭の中に浮かんだのは、「抑制」というひとことだった。<br /><br />
次の日から、私は生まれ育った中国の地を離れ、世界を転々とし、彷徨う旅に出た。<br /><br />
行く先々では、どこからか金が沸いて出てきているのではないか、と思わせるほどの豪遊ぶりで、ギャンブルをし、女を買うことに金を使う日々を送りはじめた。<br />
巷では、私に対して、メディアが盛んに何かを言っているようだったが、あえて目にしないようにし、耳にすることを避け、残り少ない命を切れた凧のように、あてもなく放浪し続けていた。<br /><br />
そんな中、医学界では彼の噂で持ちきりだった。<br /><br />
「まったく、あの気孔師、どこにいるんだろうか。精密検査の結果、とんでもない細胞の持ち主だってことがわかったというのに。」<br />
「長年、継続して彼の気孔を受けると、どうやら細胞が強化されて、超人になれるらしい。」<br />
「彼の細胞は、切り取っても死滅することなく再生し、生存し続けているとはな。」<br />
「気孔によって活性化された細胞が、不老不死の体を作り出すなんて。」<br /><br />
どうやら尋常じゃない具合の悪さは、尋常じゃない好転反応だったらしい。<br /><br /><a href="http://googleads.g.doubleclick.net/aclk?sa=l&amp;ai=BpTQvJShMS-X1KYSSvwOYkPyRBp3rzJABja3p4AzAjbcBwICXGxABGAMgzaKdFygCOABQ_MOi_fn_____AWCJq86EmBSgAYeohf8DsgENbW9zby5qdWdlbS5jY8gBAdoBHGh0dHA6Ly9tb3NvLmp1Z2VtLmNjLz9laWQ9MzapAmPDMvIeRkc-qAMB6APyA-gDpAPoA_MD6ANQ9QMIAACE&amp;num=3&amp;sig=AGiWqtyS1O-qqaRRKo1g4tI0otSYMtAhKQ&amp;client=ca-paperboy-jugem_js&amp;adurl=http://www.1mfk.com" style="text-decoration: none;"><span style="font-size: 14px; font-weight: bold; line-height: 200%;"></span></a> ]]>
        
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    <title>針の箱</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.musashinor.net/yamadauca/2010/02/post.html" />
    <id>tag:www.musashinor.net,2010:/yamadauca//14.98</id>

    <published>2010-02-23T17:52:36Z</published>
    <updated>2010-03-01T13:28:57Z</updated>

    <summary>母が他界した。それは、あっという間の出来事で、毎日の生活の中にいやおうなく喰い込...</summary>
    <author>
        <name>アライミツル</name>
        <uri>http://www.musashinor.net/geeek/</uri>
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.musashinor.net/yamadauca/">
        <![CDATA[<div>母が他界した。</div><div><br /></div><div>それは、あっという間の出来事で、毎日の生活の中にいやおうなく喰い込んできた。</div><div>生きている、ということと、死んでしまった、ということの現実を突きつけられた。</div><div>&nbsp;</div><div>　死んでしまったものの時は止まり、それでも、残った生きているものは生きていく。</div><div>その矛盾と習慣に戸惑い、そうしているうちに49日を迎えた。</div><div><br /></div><div>朝、不思議な夢から目覚めた。</div><div>ただ、ただ、真っ白な白の中に、母が立っていた。</div><div>そして、こう言う。</div><div><br /></div><div>『真ちゃん。閉まってあるからね。もう大丈夫よ。』</div><div><br /></div><div>何のことだかわからず、僕は母に問い掛ける。</div><div>何を言っても、夢の中の母は、ちょっと寂しそうな、悲しそうな顔をして、同じことを繰り返す。</div><div><br /></div><div>何のことだろう、見当がつかない。考えてはみたけれど、一向に思い当たるふしがない。</div><div>それを境に、母は毎日のように僕の夢に出てきては、同じ事を繰り返すようになった。</div><div>問い掛けても、答えはない。</div><div><br /></div><div>夢を見始めてから、初めての日曜日を迎え、父と朝食を済ませたあと、縁側に座って話をしていた。</div><div>「お前は、母さんにかわいがられていたからなぁ。」</div><div>そう言って、目を細める父に、ふと、夢のことを聞いてみた。</div><div>父はびっくりしたような顔をし、それからしばらく沈黙が続いたあと、こう言った。</div><div><br /></div><div>「･･･そうか。母さんの部屋に行ってみるといい。」</div><div>そう父に告げられ、僕はそのまま母の部屋に向かった。</div><div><br /></div><div>母の部屋は、1階の奥の南側に面した所にあった。</div><div>小さな6畳の部屋の扉を開けると、レースのカーテンからこぼれた日差しが眩しく、目が慣れるまでその場に立って瞳を閉じていた。</div><div><br /></div><div>瞳の奥に記憶が蘇る。そう言えば、学校から帰ってこの扉を開けると、逆光にオブジェのように浮かび上がる母が、いつも「お帰り。」と言ってくれて、その、かすかに微笑んでいる口元が印象的だった。</div><div>今にも背後から母が現れそうな、そんな状態で部屋の中は時間が止まっていた。ゆっくりと窓辺に近づくと、ここから門がよく見えた。僕が扉を開けるとき、いつも母が振り向いている理由がわかった。</div><div><br /></div><div>くるり、と、振り向いて部屋を見渡した。</div><div>大きな箪笥。</div><div>小さなドレッサーには化粧瓶が並んでいる。</div><div>その隣に、古いミシンが置いてある。裁縫が好きだった母は、いつもこのミシンの前に座っていた。</div><div><br /></div><div>ミシンに近づき、椅子を引き出して座ってみる。正面に向かうと、小さな引出しがついているのを見つけた。そっとあけてみると、糸やら、ハサミ、メジャーなどがひしめき合っている。</div><div><br /></div><div>閉めようとしたとき、引出しの置くに光るものを見つけた。小さな鍵だった。</div><div>どうやら、どこかの鍵らしい。部屋を見渡すと、鍵がついている引出しや、物入れなどはなかった。</div><div><br /></div><div>母の部屋を出て、家中の物入れの鍵穴に鍵を入れてみたが、どれも当てはまらない。</div><div>暫く途方に暮れていたが、ふと、屋根裏部屋の存在を思い出した。</div><div><br /></div><div>普段は滅多に下ろすことのない、屋根裏部屋へ続く階段を下ろすレバーを引き、一段ずつ上がっていった。</div><div><br /></div><div>埃と黴の匂いが、鼻にツンときた。</div><div>そこはただの物置になっており、学習机や衣装ケースやダンボールなどが、ここ狭しとひしめき合っていた。</div><div><br /></div><div>一通り見回し、懐かしんでいると、部屋の片隅に、小学校まで使っていた机を見つけた。</div><div>うっすらと埃をかぶってはいたものの、懐かしさに引き出しを開けて みる。</div><div>一番上の幅が広い引出しには、小学校の時に、図工の時間で書いた絵や、国語の時間に書いた作文などが、丁寧にとってあった。</div><div><br /></div><div>2つ目の引き出しには、小学校の時に使っていた教科書が入っていた。</div><div>三つ目の、深さがある引出しを開けようとすると、『ガチリ』といって、鍵がかかっていた。</div><div>おもむろに先ほどの鍵を取り出して、鍵穴に入れてみると、ぴったり合った。</div><div><br /></div><div>引き出しを開けると、綺麗に折りたたんである布が見えた。</div><div>取り出して広げてみると、ベッドカバーだった。</div><div>裁縫が得意な母が作ったパッチワークのベッドカバー。</div><div>今見るとかなり手の込んだ柄で、一針一針、手縫いなのには驚いた。</div><div><br /></div><div>そうだった。</div><div>このベッドカバーの柄が恐くて、夜中に起きた時、よく泣いたんだった。</div><div>沢山の四角の中のカントリー調の模様に、働く人間の姿を刺繍しているものがいくつかあって、それがやけに恐かった。</div><div><br /></div><div>そう思いながら、引き出しの底に目をやると、小さな箱を見つけた。</div><div>箱を開けてみて、更に驚いた。大小からなる、針の数々。マチ針、ミシン針、縫い針など、数十本の針が入っていた。</div><div><br /></div><div>そうだった。</div><div>母が裁縫をしている隣で、危ないから触ってはいけない、と言われているのに、触ってしまい、マチ針を指に刺してしまったことが何度もあった。</div><div>勢い余って思いのほか深く刺してしまい、指の端で、針が貫通してしまったこともあった。</div><div><br /></div><div>今思うと、どちらもよく泣いた。何度も泣いた。</div><div>その度、母が悲しそうな顔をしていた。</div><div>母がどうして急に、あんなに大好きな裁縫を止めてしまったのか、気にしたことがなかった。</div><div>引き出しを閉めたときに、ふと、気がついた。</div><div>何度も、何度も開けたのだろう。鍵穴の横には、無数の傷が付いていた。</div><div><br /></div><div>すぐさまベッドカバーと針の箱を持って、母の墓に向かった。</div><div>静かな墓地に春の日差しが落ちていた。</div><div>母が入っている墓石の前でしばし立ち止まり、思った。</div><div><br /></div><div>彼女の優しさは、計り知れないほど、深いものだった。</div><div>それは、愛情ではなく、愛、そのものだったのかもしれない。</div><div><br /></div><div>箱を静かに足元に置いた。そして、ふわり、と、ベッドカバーを墓石の上に掛けた。</div><div>暖かい風が、足元から吹き上がった。</div><div>はためいたベッドカバーの裾のその向こうに、雲ひとつない青空が見えた。</div><div><br /></div><div><br /></div><div><br /></div><div><br /></div><div>(C)yamada.文章の転写や記載は禁止です</div> ]]>
        
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