私が尊敬してやまない不良のおじさんがいる。大人ってかっこいいんだと思わせてくれる人。御年50歳。
最初の出会いは、大学を卒業して入社した自衛隊ばりに過酷なイベント・広告会社。配属になった課にいたのがそのおじさん。スーツを着てネクタイしてという社の中で、一人そのおじさんは革パンにジャケットという出で立ちで仕事をしていた。この人何?って思ったが、普通の営業担当だった。
配属後しばらくは話す機会は無かったが、この不良のおじさんが担当するイベント現場に駆り出されたのをきっかけに仲良くしていただけるようになった。
おじさんは車が好きでバイクも好き。そんな感じで遊びの話で盛り上がる日々。
「お前がバイクの話しばかりするからさー、悔しいから買っちゃったよ、スーパーカブ!」そういっておじさんが10年ぶりにバイクで会社に来た時は嬉しかった。このおじさんに少しでも影響を与えられた事がね。
※度重なる免停により、この時は原付しか乗れなかった
行動力の塊のおじさんは、一気に大型自動二輪まで取得しついにBMWのでかいバイクを買った。「お前より速いバイク買ってやったぞ、どうだ悔しいだろ!」というセリフ。悔しかった。
おじさんの人生哲学は、「だって人生一回しかないじゃん」。これ、絶体ブレない。
だからおじさんは、堂々と不倫だってしてる。「だってすっげーいい女で俺の事好きでしょうがないっていうんだからしょうがないじゃん」って。でも家族超大事にしてる。二人いる娘とはむちゃくちゃ仲良しで、一緒に買い物とか行ってる。手とか繋いでるし。娘の彼氏ともすぐ仲良くなっちゃう。
昔、10年後の為に毎月貯金をしていると言った私に、「お前がその歳でたかだか数万円ぽっちを貯金することで逃してる経験と、10年後に貯めた100万円でできる経験とどっちが大事だと思う?その100万円はお前の逃した10年分の経験を埋めてはくれないぜ」って。ぐさっと来た。
一度、「何で結婚したんすか?」と聞いたことがある。おじさんは「ジェームス・ディーンが26歳で結婚したんだよね。だから俺も同じ歳で結婚しなきゃなって思った。」って。その理由に無駄にしびれた22歳を私。真似しようかと思ったけどダメだった。
海外に一人で出張したときも、一人で海外の風俗に行った。「良く行けましたね?ビビらないですか?」と問う私に、
「そりゃ入り口くぐるときはめちゃくちゃビビるよ。でも人生一回しか無いからなんでも経験だし、帰ってからみんなに話したいじゃん。つーか、みんなの顔が浮かんだわけよ!だからみんなの後押しがあったから行けたんだな多分。おもしろかったぞ」だって。
おじさんが会社を辞めて転職するとき、めずらしくあらたまった口調で「お前、俺と一緒に来い」って言ってくれた事がいまでも自分の自信。この時は、よっぽど一緒に行こうかと思った。でも、なぜか行けなかった。このままおじさんの後を追ってしまうと、流れに流されただけで自分が無くなっちゃうかなと思った。それは今では正解だったような失敗だったような、分からない。
そんなおじさん、この間の日曜日、高速道路をツーリング中に大事故に遭った。
月曜日、会社のメールを開くと一緒にツーリングに行ってた人からメールが来てて知った。
この時点で集中治療室。48時間の監視状態とのこと。
昔からおじさんは、私が質問とか将来の話しをすると「まあ、俺は長く生きないから最後は自分で考えな」が口癖だった。
ほんとに、こんなに早く死んじゃうのかと思った。
でも、幸い、おじさんは死ななかった。
全身8箇所の骨折。大腿骨は粉砕骨折。入院3ヶ月、リハビリ最低8ヶ月の全治1年。
でも生きてて良かった。
先日、お見舞いに行った。
病室に入ると元気そうな表情で迎えてくれた。いつものおじさんの笑い顔。
両手両足には痛々しい手術の跡。
おじさんは色々話してくれた。
事故の原因は、高速道路で追い越し車線を嫌な感じで走ってくる外車がいて一度前を譲ろうと思って走行車線に移ったがその外車はおじさんを抜いていかない。ならばともう一回追い越し車線に出たらまた付いて来る。面倒だからもう一回走行車線に移ったらやっぱり抜かない。なんなんだと思い、ミラーを見ていたらしい。多分その間はほんの数秒だろう。ふと前を見たときには、極端に遅い前の車に当たっていたらしい。おじさんは140kmくらいで走ってた。ぐっと前の車に当たる瞬間も、はね上げられて一瞬その車が自分の下に見えた瞬間も、地面に着地する瞬間も、そのまま何回転したか分からないけど転がってる瞬間も、全部覚えてるって。転がり終わって止まったとき、腕とか脚とか取れちゃったかな?って思ったけど付いてて良かったって思ったとか、でも感覚無いなとか。
病院に運ばれて最初の夜、手術後の集中治療室に死んだおばあちゃんが来たらしい。
婆「あんた、昔から左手だけで鶴が折れたよね。今やりなさい」
お「えー、今無理だよ。だってこんなに骨折れてんだよ」
婆「いいから、今やらないと大変なことになるのよ」
お「今じゃないとだめ?」
婆「今やるの。みんなが待ってるんだから、早くやりなさい。」
夢の中か起きてたのか分からないけど、おじさんは鶴を折ったらしい。その鶴を見せてもらった。へたっぴだけど小さい鶴がしっかり折られてた。医者に聞いたら、その日はターニングポイントだったらしい。
「まあ、こういう事って本当にあるんだなー。婆ちゃん以外にもいろんな人が来たよ。」って。
「みんなして、お前はまだやることあるんだからって言うんだよね。でもさ、もう体ぐちゃぐちゃだし、もう良くない?って聞いたんだけど、みんなしてダメだって言うからさ。あーはいはいって思ったよ」って。
「どうやらさ、まだお前は生きろってことらしいからさ、しっかり直して復活することにしたよ」って。
実際、おじさんはどこまで完全に直るかはまだ分からないけど「なんか、もと通りになる自信があるんだよね」って復活する方向にベクトルを定めてる。その眼に迷いは無い。
帰り際に「お前もさ、なんか疲れた顔してるけどしっかりやれよ。いっぱい辛いことといっぱいおもしろい事を含めて人生一回だからな」って私の心配してくれた。病院からの帰り道、不覚にも思いっきり泣けて来た。おじさんが生きてた事の嬉しさと、ものすごい逆境なのに私の事を心配してくれ、復活に向かってぐっと前を向いてるおじさんを見て痛感した自分の情けなさで。
おじさん、生きてて良かったです。まだ教えてもらいたいことが山ほどありますから。待ってます!





いいオジサンだ!オレも会ってみたいな!!
早く良くなるといいな!!!
ステキなおじさんですね。
仕事中に読んでたら泣けてきた。。
早く治りますように。
本当に、いまどきいないおじさんです。
早く治って欲しいです。
おじさん、その姿を見たら「あー納得」って感じですよ。
いいひとと出会っているね。
君の周りにはいいひとばかりじゃないか。
>「ジェームス・ディーンが26歳で結婚したんだよね。だから俺も同じ歳で結婚しなきゃなって思った。」
ジェームス・ディーンは24歳のとき自動車事故で死んだ。
恋人と破局し、その直後にその恋人は電撃入籍。
事故はそれから10ヵ月後のことだったという。
別の意味があるのか……、おじさんのメッセージかな。