<番外編>親父の本音

先日田舎の親父から電話が掛かってきた。
日曜の夜7時、特段珍しくない時間の電話。
この歳になると、実家や親類からの着信にはいちいちヒヤッとする事が多い。特に普段とは違う時間、例えば絶体電話に出れないと分かっているであろう平日の昼間や、夜遅い時間など。
その理由はただ一つで、実家のおじいちゃんおばあちゃんに何かあったのか?と考えるからだ。
今回は、良くありがちな時間だったのでそれほど不安を感じずに電話に出た。

電話口の親父は、ちょっとほろ酔いかな?と思わせるトーンだったのでより安心した。話しは、いつも通り元気にしてるか?というような内容だった。こちらも近況を話しながら5分程雑談。

すると、親父は突然話しを変えた。
実家の隣のお宅が未明に火事になり、全焼してしまったとの事。そのお宅とは10メートル程しか離れておらず、未明に起きてそのお宅から火の手が上がっている光景を目にした時は、「これは家もダメだ」と本気で覚悟をしたらしい。
必死に隣のお袋を起こし、1階に寝ている90歳を超えているおじいちゃんとおばあちゃんを連れて逃げ出したと。

その間もお隣の火の手は強まるばかりだったようだが、消防が駆けつけ実家の火事に面した所に放水をしてくれたのと、火事のお宅の屋根が早々に焼け落ちた事により、火が横に向かず上に上にと向かった為奇跡的に実家は被害が無く済んだという。

聞いていて、あまりの事に全く実感が湧かなかった。

ただ、その後の親父の言葉にはものすごいリアリティを感じた。

親父「あのな、そりゃ最初に隣が燃えてるのを見たときはびっくりしたよ。慌ててお母さんを起こしたとこまでは良かったけど、その後はもうどうすりゃいいのか分からなかった。ただ、とにかくじいちゃんばあちゃんを連れて外に出ないとって思ったらあとは無我夢中だったな。あんまり覚えてないわ。ただな、外に出て消防さんが消化してるのを見ながら、このまま家が燃えて無くなったら俺は終わりだと思ったよ。これまで働いてきた証みたいなこの家が無くなったら、これまでが全部無駄になっちゃうんじゃねーかってな。お前ら兄弟が育って巣立っていった家だし、今はこのじいちゃんばあちゃんを面倒みてて後は穏やかに残りの人生を過ごさせてやる為の家だからな。だから、家が燃えずに済んだ時は、普段は信じないけど神様なんてのに感謝したもんだよ。というわけで、まあいづれにしても家は無事だしじいちゃんばあちゃんも無事だしお母さんも大丈夫だからな、安心しろ。一応報告ということで。」

当たり前だけど、実家の「家」には親父のこれまでの人生における誇りがあり、家族の誰よりも思い入れがあるんだね。一国一城の主とは良くいうけど、まさにそういう事なんだよ。だからこそ、家が無くなるといことは親父の全てが無くなるってことなんだよ。

こんな話しを聞いて、改めて親父の思いっていうものが分かった気がする。「親の心、子知らず」と言うけど、いつまでも「子知らず」のままじゃ良くないなと強く感じた一件。

今度夏のお盆の頃には久々に帰省しよう。そして、まずは無事に残った家を見ていろんな事に感謝しよう。親父といろいろ話してみよう。「一家の主」論についてじっくり語ってもらおう。
東京で一人でがむしゃらにやってるつもりで、なんでも一人でやれてるつもりで、もう大人だと思い込んでるつもりの私だけど、まだまだ根本的に持ってないものを教えてもらおう。

男の子供にとって親父は、一番の先輩。


そんな先輩、
「ところでお盆に来るときは、あれか、嫁になる相手でも連れてくんのか?早く孫が見たいからな。」
いつも、最後にどうしても一言多い。惜しい!!!

「できたちゃった婚でも俺は全然構わないからな」
そしてさらに一言多い。残念!!!


渋い!國村隼。こんな親父になれるだろうか。

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