できたら避けたい #1 〜部下がマドンナだった件〜 第5夜

できたら避けたい #1 〜部下がマドンナだった件〜 第5夜

小「あの、、、ちょっとご相談があるんですけど・・・」

遂に本題を切り出すのか、小池。
時刻は23:30。終電を考えると残された時間はあとわずかだ。

小「勘のいい先輩でしたらだいたいお察しかと思いますが・・・」
私「いやいや、別に勘とか良くないし、なんなら鈍感な方だけど」
小「そんなことありません!先輩はいつも回りに気を回すし勘のいい人です!私、人を見る目はあるんです!」
私「そんなことで怒らなくても・・・。話の論点ずれてるぞ」
小「あ、すみません。ついムキになってしまって」
私「褒められたのか怒られたのか分からんな(笑)。で、いいから、どうしたの?」
小「ええ、あの、、、はい・・・えーと」
私「おいおい、そこでいきなり歯切れが悪くなるか?普通(笑)」
小「すみません。いざとなると、どうお話したらいいのかビビってしまって」
私「さっき約束したよな。誰にも言わないって。俺が信用できないか?」
小「決してそんなんじゃないです。先輩の事は誰よりも信頼してます」
私「なら、言ってみな。どんな内容かによるけど、できるだけの事はするよ。だからビビらず言ってみな」
小「ありがとうございます。・・・・・はい!言います」
小「今朝先輩がご覧になったように、橋爪さんの事で困ってるんです」

・・・・きたよ、ケンコバ。やっぱりそういう事態が起こったよ。お前が言ってのはこういう事かよ。

私「なるほどな。で、具体的にはどういうことなの?」
小「はい、実はこの会社の3次面接の時の面接官が橋爪さんでして、、」
私「3次面接ってことはあれか、鬼の圧迫面接の回だろ?」
小「そうです。あの圧迫面接が橋爪さんでした。」

うちの会社は選考が進むうちに3次面接のときに恒例の圧迫面接をすることにしている。

小「その面接の時は本当に怖くて、私必死で乗り切ったんです。そしたら面接後に橋爪さんに呼ばれて、君は見どころがあるから役員には僕から推薦しておくよ。だから最終の役員面接は下手な事をしないようにって」
小「そしたら本当に3次面接は本当に通過して、役員面接も通過して内定もらえたんです」
私「ほう。そこまでは特に問題ないよな。」
小「そうです。私も最初は第一志望の会社に入れて本当に嬉しくて、橋爪さんに感謝してました」
小「それで、入社式の日に橋爪さんにお礼に行ったんです。そのときは橋爪さんも頑張れと言ってくださって」

なんとなく違和感。橋爪さんってそんな面倒見のいい人だったか・・・

小「それでそれから入社してたまにフロアでお会いしたときとかも良く話かけられたりしてたんです」

んん、この話の流れって・・・。どこぞのB級ドラマであったような・・・。

小「そのうちご飯行こうとかっていうお誘いをいただくようになって」

なんとなく話の流れが、俺の想像する中で一番嫌な方向に向かってる気がする・・・

小「それで一度ランチをご一緒したのですが、その時に今度は飲みに行こうって言われて、断れずに仕事終わりで飲みに行ったんです。」

俺がよっぽどアホじゃなきゃ、この流れは最悪の方向に向かってるな。

小「それで、飲みに行ったとき、今度は休みの日は何してるんだってなって・・・・」
私「そして休みの日の誘いまで受けるようになったんだな」
小「そ、そうです。」
私「そんなの断っていいんだよ!ランチとか、たまの飲みとかまでは許容範囲だけど休みの日まではいきすぎだ」
小「そうなんですけど、内定が取れたのは橋爪さんの推薦があってですし・・・」

来た。ピンと来た。この話の趣旨完全に読み取った。

私「お前さ、その推薦をネタに軽く強要されてるな」
小「・・・・・・・・」
私「はっきりしろ。推薦してやったんだからって事で断れないようにされてるだろ!そうなんだろ!」
小「・・・はい。そうです。」

ケンコバ、俺はスイッチが入ってしまったよ。

私「他には?他にもなんかあるのか。言ってみろ」
小「・・・・・家に遊びに来い・・・とか」
私「それだけか?どうなんだよ!!」

いつの間にか声を荒げていた事に気付いた。回りの客がニヤニヤと見ているじゃないか。しかも目の前には若い女の子がいまにも泣きそうな顔してうつむいているし。しかもその女の子はマドンナ小池。目立ち度120%。普通なら恥ずかしくなるところだが、今日の私は違った。もう完全にスイッチが入っている。

小「今はそれだけです」

私「分かった。良く話してくれたな。後は俺に預けろ」
小「で、でもどうするんですか?」
私「なあ、研修の一番最初で俺が教えただろ。社会人の基本は報・連・相だって。」
小「はい。報告・連絡・相談ですよね」
私「そう、お前は俺に報・連・相という責任を果たしたわけだ」
小「はい」
私「今度は報・連・相を受けた上司が、それに対して応えるのが責任ってわけ」
私「だから、この件に関してはボールは今俺の手元にあるわけ。小池の役割はダンだよ」
小「分かりました。ありがとうございます。」
私「任せろ。もう気にするな」
小「はい!」
さっきまでの、今にも泣きそうな顔からパアッといつもの笑顔に戻った。

小池よ、こんなに一生懸命で真っすぐで、夢溢れる社会人生活のスタートを切ったばかりのお前から、この笑顔を奪う事なんてできやしないし、そんな事させやしないよ。

私はこれまでに感じた事の無い憤りと共に使命感や気概のようなものを感じていた。

その感情は一言では、言葉にできないのである。


続く

<言葉にできない>

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