できたら避けたい #1 〜部下がマドンナだった件〜 第4夜

できたら避けたい #1 〜部下がマドンナだった件〜 第4夜


小池からのお誘いメールにより仕事終わりに食事に行く事になった。
自分の仕事は終えたのだが、どうにも小池を連れ立って一緒に会社を出ていくことがはばかられてしまい、先に部屋を出て1Fのエントランスで待たせる事にした。
別に先輩と後輩が連れ立って仕事終わりに出て行く事なんて普通だし、仕事終わりの一杯を共にすることもいたって普通の事だ。ただ、相手が小池となると少々勝手が違う。私と小池が一緒に部屋を出ようとするシーンが誰かの目に留まろうものなら、ここぞとばかりに狙いをつけていたハイエナ諸君がこれ幸いとばかりに群がってくることが容易に想像できた。普段は、まだ教育係の私を通り越して直接誘うのはいかがなものか?という言わば様子見な感があるが、私が一緒となると一気に遠慮が無くなるだろう。なんて面倒な・・・。
また、今朝私に橋爪さんとのやり取りを見られてしまった後の小池は、研修中もどこかいつもと違う感じがした。誘いのメールが来た時点で、私に何か話したいことがあるんだろうと想像がついたのでより慎重に行動しなくてはという考えが頭をよぎった。

私から先に会社の1Fまで降りて待つようにという指示を受けた小池は、さもいつも通りの帰宅姿勢を見せながら部屋を出ていった。私も5分程時間を置いて、同じくさもいつも通りの帰宅姿勢で部屋を出た。時間は20:00、まだまだ部屋には働いている人間が多い。広告会社の一日はまだこれからが本番なのだ。


1Fに降りると、エントランスの外で小池が待っていた。ガラス越しに立っている彼女の表情は朝見たそれと同じくどこか不安気な表情をしていた。やはり何か問題を抱えているんだろう。ただ、彼女にとっては本意じゃなないかも知れないが、愛想いっぱいの表情よりもこのどこか物憂げな表情の方が彼女には似合っているなと変な感想を持った。恐らく、これまでもこの表情に心奪われたきた男子は少なくないんじゃなないかなと勝手に想像。恐らく本人はそんなことには一切気付いていないだろうけれども。

その日は、会社から地下鉄で2駅離れた場所にあるうどん屋に小池を連れていった。ここは、一見雑多なうどん屋なのだが、夜はうどん以外のメニューがとても美味しく特にアスパラの天ぷらは絶品で、うどんよりもこの天ぷらを目的にたまに訪れていた。店の雰囲気も、うるさくもなくまた変にしっとりしていないのでとても落ち着いて気楽に食事ができるとても絶妙な店だ。

さっそく生ビールとアスパラ天ぷらを注文。生ビールを一気に流し込んで一息ついた。毎度のことだがこの生ビールの1杯目を飲む為に生きてると言っても過言ではないんじゃないか。続いてお待ちかねのアスパラ天ぷら。この熱々をおろしの入った麺つゆにくぐらせて食べるのが最高。何度食べても飽きることがない。続けざまに3本を食べて、またビールで流し込む。ようやく一息ついた。

うっかりビールとアスパラに夢中になり小池を放置してしまっている事に気付いた。
私「どうよこのアスパラは?めちゃくちゃ美味いだろう」
小「ホントに美味しいですねー。ホクホクしてるアスパラってなんかすごいですね!」
私「ホクホクってのは新しいな(笑)でも確かにそうかもな」
小「何本でも食べられますね!ビールも進んじゃいます」
私「そういえばお前は酒は飲めるんだっけ?何気に一緒に飲むの初めてだな」
小「私こう見えてもビール党なんですよ。焼酎とかワインとかはダメなんです。」
私「なかなか女の子にしては珍しいなー。」
小「最初から最後までビールですよ♪」
私「でもさ、女の子なら甘いカクテルとか言ってる方がもてるんんじゃないのか?」
小「それはそうかも知れないですけど、そんな理由でもてても仕方ないですからね」
私「お前、冷めてんのか芯が強いのか良く分からんな・・・・・」
小「そんなんじゃないですよ。こういうところ不器用だなっていつも思いますし」
私「まあ、なんというかそのギャップがおもしろいよな」
小「ギャップってなんですか?そんなの無いと思いますけど」
私「あるって!」
小「じゃあ先輩は私の事どう思っているんですか?」
私「そうだな、真面目で向上心があって、それから・・・」
小「またウソばっかり。本当はそんな事思ってないんじゃないですか?本当のこと言ってくださいよ」
私「ホントにそう思ってるんだって。他の人がどう思ってるかは知らないけどさ」
小「嬉しいです。ウソでもそんな風に言ってもらえて」
私「ウソじゃないってば!」
小「そんなにムキにならなくてもいいじゃないですか(笑)」
なぜか、いつものまにか小池のペースになっていることに気付いた私。なんでこんなに必死に弁解してんだろとちょっと恥ずかしくなってしまった。先輩としての立場が形なしだ。
小「でも、本当に嬉しいですよ。先輩はちゃんと分かってもらってるんですね。」
小「自分でも分かってるんです。自分で言うのもなんですけど、見た目で寄って来る人ってやっぱり多くて」
小「別に自惚れてる訳じゃなくて、昔から回りの友達とかにお前は見た目で得してるとか言われてました」
小「そんな事をずっと言われてると、変に勘繰ってしまって知りあった人とかもあんまり信じられないようになっちゃったりとかって時期もありました。どうせ見た目だけで仲良くなったんじゃないかって」
小「でも、たまに本当に私の性格とか理解してくれて、友達になれる人もいるんですけどね」
私「そうか、そういう事もあるんだな。なんか俺には無縁な悩みだからな」
小「だから、これまでは友達とかだから良かったんですけど、就職して会社に入ったらどうなるんだろうってずっと心配だったんです」
小「でも、最初に付いた先輩がどうやら分かってくれる方だったのでとても嬉しいですよ」

なんとも変な告白をされた感が否めないが、どうやら私でも少しは役に立ってるみたいだなとちょっとだけ誇らしげな気持ちになった。いつのまにか大人になったみたいだなとひとりごちる。

私「で、どうなのよ?会社に入ってしばらく経ったけど感想は?」
小「毎日覚える事が多くて、変なたとえですけど脳が腫れる感じですね!」
私「脳が腫れるって(笑)」
小「分かりませんか?脳がいっぱいいっぱいになって、こう脳圧が高まってる感じです」
私「分からないよ!そんなの。でも楽しいか?」
小「楽しいです!ずっと広告のお仕事がしたかったので、毎日とても楽しいんです」
私「それは良かった。でもこれからドンドン厳しい事があるぞ。帰るのもドンドン遅くなるし」
小「覚悟のうえですから大丈夫です!」

それからは、大学の時に何をしてたとか趣味は何なのかとかといってたわいもない話をしながら1時間程食べて飲んだ。だいぶ彼女の事が分かってきたし、彼女も私の事が少し分かったんじゃないだろうか。

そして、

小「あの、、、ちょっとご相談があるんですけど・・・」

遂に本題を切り出すのか、小池。

私「どうした?」
小「こんなこと先輩にお話すべきかどうか分からないんですが・・・」
私「なんだ、言ってみろよ」
小「絶対誰にも言わないで欲しいんですけど、約束していただけますか?」
私「分かった。約束するけど、、、」

いよいよか、小池。何を言い出すんだ!!


続く。

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