できたら避けたい#1 〜部下がマドンナだった件〜 第1夜
激動の3月決算期をどうにかノルマ達成で乗り越え、完全に燃えつきていた私。3年目ということもあり、上司からは一切の甘えを断固許さん的なプレッシャーを嫌という程浴びてきた中で、なんとかノルマを超えた事は自分でも良くやったと自賛していた。そうは言っても、明後日からは4月に入りこれまでの成績はリセットされ、また一から数字を積み上げなくてはならない。
私の働いている広告業界も、当然のごとくリーマンショックの影響をモロに受けていて業界全体で氷河期に突入している。最大手の電通や博報堂ですら前年比−で決算をしているのだから、私の会社のように4番手5番手の中堅代理店ではよりキビシイ現実に晒されている。前期はなんとか持ちこたえたけど、今期はキビシイだろうなと覚悟しなくてはならない。さらに、前期にノルマを超えているものだから、今期は当然ノルマアップとなる。社会は厳しいぜ。
「なあ、お前ちょっといいか?ミーティングルームに来てくんない?あ、何も持って来なくていいからさー」
そんなある日、石田純一風なグループマネジャーに呼び出された。
あの笑顔、完全に何か企んでるな。。。いつも以上に、、、ちゃらい。
石「どうよ調子は〜」
私「はあ、まあ可も無く不可も無くといった感じですかね・・・」
石「なーによその微妙な感じは。まあさ、お前もいよいよ、なんつーの?ぐぐっと行く頃だよな」
私「はあ、まあぐぐっとっていう感じが分かりませんが、なんとか頑張ってますが」
石「いいじゃない、そんな感じでさ、今期もぐぐっと行っちゃってよって話よ」
私「もちろん、がんばらせていただきますが・・・」
石「オッケーオッケー、よろしくねー」
(このオヤジ、相変わらずしゃらっとしてやがる。何が言いたい?しかし、こう無駄にさわやかな42歳だな!こんなにピンクのシャツを第二ボタンまでハダけるのが似合うヤツいねーべ)
石「って事でさ、今期もよろしくねー」
私「はい。って、お話はそれだけっすか?」
石「そうそう、大事な事忘れちゃったよ。今期さ、新人ちゃんがこの営業部にも5人来るわけよ。」
私「はあ」
石「えーとね、男4人の女1人ね。で、お前の下に一人付けるからよろしくね。誰を付けるかは1日になったら分かるからねー」
私「まじっすか?俺にですか?」
石「そうそうそうそう、お前もさーもう4年目じゃん?いいんじゃない?そんなのもさ。ってことで適当によろしくねー」
という事で、もう一つ更に憂鬱な荷物を背負わされた私。
だいたいこの会社に入って来るやつなんて、広告業界特有のめちゃくちゃ高学歴なインテリ君か、完全な体育会系な無駄に胸板の厚いヤツと相場は決まってる。「ウッス!」とか言うに決まってるし。あー面倒くさい。そして毎年一人はいる女子ってのも、これまた広告業界特有の自己顕示欲の塊みたいな、だいたい何でも前のめりで来る娘って相場は決まっている。二言目には「私なら・・・」みたいに自分に置き換えてきやがると決まったいる。私の同期にいる女子なんかその最たる例じゃないか!もう攻撃的なまでにメイクを決め、服もやり過ぎじゃないの?的にキメキメだし。まあ、確かにガッツはあるが。大体そんなヤツじゃないともたない業界ではあるけどね。
そんなこんなで、4月1日。朝から完全に憂鬱モード全開。今日からは新人の面倒を見るという事実が完全に重しとなってる。あー、なんで俺が体育会系なやつの面倒見るんだろうか?「ウッス、自分は、、、」って毎日何回聞くことやら。なんて思いながら出社。
私の会社は、よくある日本の企業のように大々的な入社式みたいなことはせず、ちょっとした全体ミーティング程度で終わる。そこで新人くんが紹介され、所属部署が発表され、そのまま配属されて来る。研修らしきものは、配属されながら即実践の場で行うというのも中々珍しいのだろう。
全体ミーティング自体は、前期の成績発表と今期の展望を社長以下役員が話し進んで行った。さすがに4回目ともなると大体言ってることは分かる。それなりにキビシイ情勢だということも理解できるだけに、気が引き締まる思いも沸いた。俺もいっぱしの社会人だなーとちょっと自分に酔ったりして。
さあ、ミーティングの終盤になり新人くん達が前方に呼び出されて整列する。名前を呼ばれて順番に姿を現す。予想通り、体育会系と無駄にインテリくんが出てくる。
「はー、完全にあいつアメフト部じゃん。次のインテリ君、絶対経営学とかで無駄に頭でっかちなやつだな。あー、また次は野球部でしょそれ?はいはいやっぱりいつも通りですね。」
・・・と、油断したそのとき、最後に呼ばれて来た女子。前方に並んだとき、一瞬その場がざわっとした気がした。
私も、油断してただけに、倍びっくりした。
そう、その娘は、めちゃくちゃかわいかった。
ミーティング後、同期の通称「ケンコバ」が走って来た。こいつは単純にケンドーコバヤシに似てるだけで安易に「ケンコバ」だ。
ケ「おいおい、君はあの新人の女の子みたかね?君の目がふしあなでなければ、可愛いと思っているんだろう?」
私「ああ、まあ確かに容姿端麗かもね」
ケ「おいおいおい、違うでしょ?確かに容姿端麗かもしれないけど、なんつーの?かわいらしさまで兼ね備えちゃってますよ。なかなかいねーんすよ、あんなのって!」
私「まあ、そうかもね」
ケ「おいおいおいおい、いまいちなリアクションじゃないですか?何、それは一種の照れ隠しってやつですか?」
私「なんで俺が照れる必要があるわけ?意味分かんねー。俺は、あの体育会系の中のだれかの面倒を見ることになってるから、それが憂鬱がだけだよ」
ケ「分からんがなー。あの女子かもしらないでしょうよ?」
私「ないない、」
ケ「まあ、この後のグループミーティングで発表されますからそこで全ては分かるわけだ!うーん、俺はね、君の下にあの女子が付く事にものすごく期待してますからね!いや、なんかもう間違いないんじゃないかって気がするね」
私「はいはい。そーかもね」
グループミーティング開始。さっきのケンコバの発言が妙に気になって頭から離れない。それまでは完全に体育会系の担当だと決めつけていた。が、今やケンコバ論が当たるような気がして落ち着かない。んー、まあこれまでの傾向を見ると女子は女性の先輩に付くから、今年もそうだろう。でも、万が一・・・ブツブツブツブツ・・・・・・
「はーいみんなおつかれー。じゃあ早速新人ちゃん紹介しちゃうから」
石田純一の一言でふと我に返った。石田純一は余計な前置きな無く、いきなり本題に入るタイプ。
石「えー、じゃあまず今年の紅一点の小池ちゃんの担当はお前ね!」
・・・・・・・・・・・
石「おい、聞こえてる?お前だよ。頼んだよー。」
私「え、あ、んん?私ですか?」
石「そうだよお前だよ。ひとつ、びしっとよろしくねー。はいじゃあ次・・・・・」
きたーーーーーー。ケンコバ論が現実に。なんてこと。まさかの紅一点担当。しかも、、、不覚にも、可愛いし。
隣ではケンコバが不気味な笑みを浮かべてるし。
小「し、新人の小池ですっ!どうぞよろしくお願いします!」
私「お、おお、こちらこそ、よろしく」
この日を境に、いろんな事に巻き込まれていく私であった。
来週に続く。
![]()
マドンナ新人
![]()
グループマネジャー
![]()
同期「ケンコバ」




