第1話「誰も知ってはいけない」
私はかつての彼女と現在親戚関係にある。関係的には義理の姉。つまり私の姉と付き合ってた彼女の兄が結婚した。しかも、それぞれは全く別のタイミングで、全く別々に出会っている。こんなことが起こるのかと今でも不思議で仕方ない。
<1章 俺の方が先だ!の1996年4月>
高校生の時に私はとある酒屋でバイトをしておりました。そこは街では割と大きめな酒屋で、ビールとかをケースで売ってるような今でいうカクヤスみたいなお店でした。そこは地元の奥樣たちがパートで働いてるくらいで、歳の近い人はいません。
ある日いつも通り出勤すると、おお、なんとその店には似つかわしくない女子高校生が事務所にいるではないですか。制服を見る限り隣の高校生。そこからは、同じ歳と判明→仲良くなる→シフトを合わせる→メールする(当時はPHS)→気になる→付き合う。なんて絵に描いたような高校生ラブでしょう。
その後私は大学進学の為上京、彼女は地元で就職ということでお別れすることに。これまた絵に描いたような高校生破局。それからは特に連絡を取ることも会うこともなく時は流れて行きます。段々に頭から消えかけていった訳です。
この時点では数年後の事件は知る由もないが、あの兄弟と出会ったのは私の方が先なのである。
・・・母からの電話が来るまでは。
<2章 静寂を破る、母からの入電 2004年6月>
社会人1年目だった私は、めずらしい母から入電に違和感を感じながら携帯を取りました。
母:「あんた、何してんの?」
私:「友達と飯食べてるけど」
母:「お姉ちゃんが結婚するわよ」
私:「まじっすか?ていうか付き合ってる人いたの?」
母:「知らないわよ!いきなり連れて来て結婚するって言うのよ」
私:「おお、なんと!でどうなるの」
母:「止めても無駄だからいいんじゃないってことになったよ」
私:「で、相手はどちらさん?」
母:「同じ市役所に勤めてる山田さん(仮名)っていう方」「駅の向こうの割烹料理屋のお隣のお家よ」
私(心の声):「ん、確かあの娘と同じ名字だな。家も近い。いやいやいやいや、あの辺りは同じ名字の家がたくさんあったはずだからな」
母:「3人兄弟の長男なんですって」
私(心の声):「ん、、確かあいつ、お兄ちゃんが二人いるって言ってたな。いやいやいや、そんな家庭はいっぱいあるっしょ」
母:「そうそう、お祖父様が消防署の署長さんもなさってたみたいでー」
私(心の声):「ん、、、確かあいつ、おじいさんが今は退役して消防団やってるって言ってたな。いやいや、消防団は大事でしょ!団っていうくらいだから他にもいっぱいいるだろ、団員が」
母:「あなたと同じ歳の妹さんがいるらしいけど」
私(心の声):「ん、、、確かあいつ、俺と同じ歳・・・ってそんなこと確認するまでもないな。いや、そんな出来過ぎな話なんかあるわけない」
母:「○○子ちゃんって知ってる?」
はい決定。起こった、ドラマのような奇跡が私に。もうどこにも否定できる材料がない。喜ぶ母の発する言葉は、一つまた一つと私の逃げ道を潰していく。恐るべし無知ゆえのテロリズム。無知は罪。この母テロリストにつき。
テロ:「11月に結婚式だからね」
私:「俺、出席?」
テロ:「あたりまえです」
私:「どうしても?」
テロ:「向こうのご家族にご挨拶してもらうからね」
私はこの結婚する姉とは残念ながら疎遠。むしろ結構仲悪い。その憎き弟が、かつて妹と付き合ってたなんて知ったらそれこそそれを理由に結婚をやめるって言い出しかねない。幸い母の話を聞く限りこの事実は知られていない模様。当の本人達もしらない。私はこの事実隠すことにした。このことは、、誰も知ってはいけないのである。
次回、ウソのような本当の話 第2話「その日の前に」へ続く。




